「おーい!シリウス!また女の子きてるよー!」
むかっ
「ブラックくんってすっごく素敵よね」
むかむかっ
「また新しい彼女できたらしいぜ!」
むかむかむかっ
どかーん!
「リコ?頭から煙でてるわよ!どうしたの?」
親友のリリーが心配して駆け寄ってくる。
「…あはは、大丈夫ー」
ぜんっぜん大丈夫じゃない。倒れそう。
「そう?無理しないでよ?」
くっはー!可愛いぜリリー!…は!違う違う、元はといえば、私がこうなっているのもすべてあのシリウスのせいなんですけども。
「それにしてもブラックってまた女の子を取っ替え引っ替えしてるのね。」
と言いながらリリーはため息をつく。ぐさ…リリーさん今の私にはつらいですよ…。
「あんなやつのどこが好きなのかしら…理解不能だわ」
ぐさぐさ…その理解不能なやつは私です…。
「好きな人といえばリコは好きな人とかいないの?」
わくわくした顔でリリーが迫ってくる。う…やっぱこれって言った方がいいのかな?親友だしリリーの事信じてるし…うん、言おう!
「あ…あのねリリー!私の好きな人は!」
しーん、
「リコ!声が大きいわよ!」
そうリリーに言われて周りを見てみるとソファーに座っている私たちの方を皆がみている。そうでした、ここは談話室。夕食後の寮生が溢れかえっている。…もちろん悪戯仕掛人たちもいるわけで。
「リコって好きな人いたの?」
「だれ!?」
「教えてよ!」
あっという間にソファーの周りが人で埋まった。
「あのねあなた達、リコが困ってるじゃない!」
誰のせいよ誰の。
そんなこんなで交わしているうちに就寝時間がきてやっと人がいなくなった。結局リリーにも言えないまま終わってしまい今は談話室に一人。
「はあ、好きな人がいるって絶対聞かれてただろうなあ…」
先ほどの出来事を思い出してため息をつく。
「もう寝よ…」
そう言ってソファーから立ち上がると後ろに人影を感じた。
「…シリウス?」
「よ、」
…ぎゃ、なになに!なんでいるの!もしかしたら今から彼女(言って後悔した)のところにでもいくのかな、
「お前…好きな人いたんだ」
「はあ…まあ一応」
可愛くない、私!もっと答え方あるだろ!
「ふーん、そっか」
「シリウスはどうなの?いないの?そういう人」
言った、聞いちゃったよ!
「俺?…いるよ。そいつ、すげー可愛いんだ」
そっかあ…いるよね。当たり前だよ、聞くんじゃなかったなあ…
「…どした?泣きそうな顔してる」
「え?…あはは大丈夫!もう寝るね?じゃ!」
そう言って女子寮に戻ろうとしたとき腕を捕まれた。
「なあ…キスって10回いったらどうなると思う?」
「へ?いきなりどしたの」
「いーから、答えて」
捕まれた腕から伝わる熱が私の頭をくらくらさせる。
「…分かんない」
あの"にもじ"ほんとは分かってる。でもシリウスの考えてる事は分かんない。
「分かんねえの?答えは…」
「…すき」
シリウスは驚いた顔をして次の瞬間私の腕を引き寄せて自分の腕の中にひきいれた。
「ちょ…シリウス!なにして、」
「すき、だいすきだ」
耳元で囁く声があまりにも甘くて。
「リコは?」
私を見つめる目があまりにも綺麗で。私とかなり違う背丈に近づけるようにつまさきで立ってあなたに伝えるわ。
「 」
あの二文字、君に使うと特別な意味をもつ言葉。
にもじ (すき―魔法のことば)