1万打



「深海魚ってなんで陸にでてくると死んじゃうの?」

ピーターのこんな些細なひとことによって、俺たちがこんなに悩むとは誰も思っても見なかっただろう。まあ、現に今かるく3時間は考え続けているわけで。飯も喉を通らなかった。周りからみたら明らかに変な集団なんだろうけど、そんな事に構っている暇はないくらい俺たちは真剣だ。



「あれじゃない?たぶん、眩しすぎるのよ、陸が。太陽の光を浴びて死んじゃうの。」
「繊細なんだよ、深海魚は。すごくナイーブだから暗い深海じゃないと住めないとか?」
「もはや引きこもり状態だからさ、外界が怖いんだね。人見知り激しかったり?」
「美味しいのかな!深海魚!」


上からエバンス、リーマス、ジェームズ、…ピーターだ。おい待て、ピーター。お前が言い出したくせに一人だけもう論点ずれてないか?



「なんだか納得いかねえな…なんでなんだ。なんでなんだよ、深海魚!」


叫んでみても誰も答えをくれるはずもなく、ただ時間だけが過ぎていった。周りのやつらは皆ぞろぞろと寮に上がっていっているというのに、俺たちはまだ眠れそうにない。


「ああっ!もう悔しいわ!なんで解けないの!嫌!悔しい!寝る!」



ついにエバンスが壊れ始めたのでしょうがなく皆解散することになった。…くそっ、なんでこんなにわかんねーんだ。なんでだ、なんであいつは死んでしまうんだ!


「あっ!」


おやすみ、といいかけたところでなぜかさっきまで発狂していたエバンスがまた大きな声を出した。おいおい、また変なことを…



「…分かったわ!深海魚の謎!」



なんだか苦笑いをしながら言うもんだから不思議に思ったけど、3時間も悩んだ答えがやっと出されるのかと思うとその解答にすごく心が踊った。


「陸と深海の圧力の差…らしいわ。圧力がかからなさすぎて、内臓やら目やらが飛び出すんだって。」



なるほど!そうなのか!なんだか妙に納得できる解答に皆大きく頷いて満足していたのでなんだか府に落ちない顔をしているエバンスにまったく気付かなかった。



「…セブルスが教えてくれたなんて、口が裂けても言えないわよね」



もちろんこの囁きにも気付くはずがないのだけれど、セブルスがリリーの制服のポケットに答えを書いた紙をこっそり入れていたなんて、みんなには(特にジェームズには)絶対に言えない。








(ふふ、ありがとセブルス)(ふん、バカな話に呆れたんだ)(ちょっ!リリー!こんなやつと話しちゃダメだよ!)(…はあ、)





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080622 エコ