もう知らない





僕には兄がいて、兄には彼女がいる。付き合いだしたのは確か半年前で普通なら倦怠期ってやつになるはずだ。だけどこの二人はとっくのとうに倦怠期へ突入していて、僕はそれに巻き込まれている。理由は兄さんの浮気だそうだ。全く兄さんのすることは、全部僕に帰ってくる。迷惑極まりない。


「兄さんが好きなら戻ればいいじゃないですか」

「な、何言ってんの?あんなの好きじゃないもん。あたしが好きなのはレギュラスだけだから」

「ふざけないでください」


ねっ、とか言いながら僕の腕に纏わりつく先輩。OWLまであと一ヶ月を切ったと前に説明したはずだけど一体この人の頭にはどれだけその情報が残ってるのだろうか。どうせ大して残ってはいないんだろうけど。
それでも何故か、前よりは先輩の行動にそこまで苛つくことがなくなった。気がする。それが単なる慣れなのか、それとも別の感情なのかは定かではない。もし、別の感情だとしたら。……だとしたら──?


「レーギュ?レっギュちゃーん」

「変な呼び方やめて下さい怒りますよ」

「ちゅーして」

「は?」

「だっから、ちゅーして」

「……行きますか」

「どこに?」

「マダム・ポンフリーのところに」

「………え、何流すの?流しちゃうの?ねえ、」


ぐらぐらと揺れる僕の身体。別に地震が起きたとかそんなんじゃない。先輩に揺すられてるだけだ。しかしこの人は、ここがどこで誰が見てるかくらいわかってるだろうに。大広間(しかも夕食中)で兄さんが見てることを。
ちらりちらりと視線を感じる。どうせ兄さんの浮気なんて先輩を振り向かすためか、はたまたその浮気相手に無理矢理何かされたところを見られたとか、そんなとこだろう。

なのにこうして先輩が僕のところに通い続けて早三ヶ月。最初の言葉が「初めましてっ!レギュラス君、だよね?浮気しよ!」だったもんだからまあなんとなくこうなることはわかっていたかもしれないけど。
兄さんから目を逸らして先輩を見てみる。その僕を見る目にはどうしたって僕のことを好きだとか、そういった感情はない。ただの当て付け。それはわかってる。
だけどそれなら僕はどうすればいい?三ヶ月も振り回された挙げ句、兄さんの当て付けに使われる。僕の感情なんて何も知らずに。


「………ませんからね、」

「え?今何て──」












何も知らないその唇にそっと口付けた


ガタン、とグリフィンドールの方から大きな音がしたけど、もう知るもんか。


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