何もかもがぐちゃぐちゃに滲んだ世界でただ一人だけでいた。原型のないものをつかんでは、その虚しさに怯えた。いったい、いつからこんなに醜い気持ちが生まれた?君に会う前までは、少なくとも、ましだった気がする。
「足立さん!」
そう話しかけてくるたびに心が軋んで、また僕の醜い心が顔を出す。いかにも純情です、っていうような顔をして僕の中に入ってくるから。
「今日はね、陽介にいっぱい話しかけられたんですよ!かなり、進歩だよね」
足立さん、の次は決まって陽介。耳にたこができるくらい花村くんの名前をきいた。毎日毎日、花村くんで一喜一憂してるなんてすごく下らないと思う。はっきり言って別に僕は花村くんとの事情なんて知らないし、どうでもいい。
「最近ね、陽介と、っていうか友達なんだけど…集まることが多くてね?幸せなんだよ」
「へー!そうなんだ」
こんな知らないふりしてるけど、本当は知ってるよ?ペルソナ使って、テレビの中にいるんだろ。特捜本部なんて言っちゃって、ほんとに下らない。正義のヒーローのつもりかなにか知らないけど。
「なんで僕なんかに報告するの、」
つい出来心だった。別に聞きたいとは思わなかったし、どうでも良かった。本当にそれだけの気持ちだったんだ。
「…足立さんが、優しいから、かな?」
何かが崩れた気がした。僕の中の何かが。優しい、なんて君は僕の何もわかってないらしい。テレビの中で人殺してるようなやつだよ?ああ、なるほど。君は花村くんしか見えてないからか。
「足立、さん?」
そう話しかけられて我に返った。いけない、まだ仮面をかぶっておかなきゃ。君をテレビに入れるにはまだ早い。もうちょっと、あと少しだけ君が皆にとって大切な存在になるまで。
「ねえ、名前ちゃん。花村くんと、頑張ってね」
君が、怯える姿がみたくて。泣き叫ぶ顔が見たくて。そんな姿を、僕だけのものにしたかった。
皆いない、君と僕だけの世界で。
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初P4です、
あだっちー好きです。キャベツでも大好きです。黒さがいいです。
120320 エコ