笑って欲しい
「あははっ」
いつも女中部屋から聞こえてくる笑い声に俺は足を止める。複数の声が聞こえるものの、耳に届くのはいつでもあいつだけの声で。
「そうなんですか?ふふっ!」
でも俺はあいつの笑った顔を見たことは、ない。
「あっ、そろそろ休憩終わりますよ!…っ、政宗…さま」
勢いよく開けられた襖にそりゃ、俺が立っていたら誰でもびっくりするだろう。…目の前にたっているのが自分の仕えている城主なのだから。
「…たまたま通っただけだ。すまねーな」
そう言うとたちまち名前たちは床に正座して俺に向かって頭を下げてひれ伏した。他の女中たちも同じ行為をしているのになぜか名前にされると胸がチクチクしてもやもやする。
「申し訳ございませんっ!政宗さま!すぐに仕事に戻りますので」
違う、と反論しようとしたところ廊下の角から小十郎が現れて軍議の時間だと伝えた。もう少し名前のそばにいたいと思う気持ちをなんとか押さえて軍議に向かう。
「仕事、頑張れよ」
そう言うのが精一杯で。俺は上手く笑えているだろうか?
「あっ、あの!政宗さま!」
まさかかえってくるとは思わなかった名前の声にびっくりしてしまった。…Hey名前、奥州の竜を驚かせるなんてやるじゃねーか。
「名前には戦のことはよく分かりませんが、政宗さまにはいつも笑っていて欲しいです。名前は、政宗さまの笑顔が好きです」
そう言うと初めて俺に笑顔を見せた。その笑顔はあまりにも綺麗で、さっきまでの胸のチクチクはなくなっていた。
「Ha!名前、いいか?よく聞いておけよ」
「はい、?」
「…俺もお前の笑顔が大好きだぜ」
そう言ったあとの名前の顔は忘れられないくらい俺以上にびっくりしていたけど。小十郎に軍議の催促をされて仕方なく廊下を進んでいく。
いきなり後ろからぐいっと着物の袖を捕まれて、そこには顔を真っ赤にした名前がいた。
笑って欲しい
(…反則です、)(Ah?俺はずっと好きだったぜ?)(名前は…初めてお会いしたときからです、)(…馬鹿野郎)
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筆頭ー\(^^)/
女中相手は
なんか好きです
080627 エコ