はい!大好きです!


「名前、分かったから離してくれ。」
「いやです、絶対いやです。」
「頼む、なんでも買ってやるから」
「なんにもいらないですよ!強いていうなら、小十郎さまが、」
「言うな、言うなよ」
「だあーっ!黙らねえか!馬鹿野郎ども!」


チュンチュン、といつものように雀が鳴いている爽やかな朝。朝の会議が行われている部屋にはやっぱりいつものように小十郎の声と名前の声と奥州筆頭、伊達政宗の怒鳴り声が響いている。



「だって小十郎さまが!」
「だってもクソもねえんだよ!名前!お前、黙ってないと次の戦連れていかねえぞ、」
「えっ!それはやだ!」


名前は伊達軍唯一の女武士で、しかも唯一政宗にタメ口を聞ける人。…タメ口を聞く度に小十郎に怒鳴られているのだけれど。


「だったら静かにしてろ。…小十郎、少しでいいから引っ付いてな」
「なっ、政宗様!?」
「やったー!政宗さま好きー!」
「Ha!だから黙ってろ、」
「はーい!」


政宗からお許しがでた名前はぴとっと小十郎にひっついて至極ご満悦の様子だった。1ミリも離れないように小十郎の横に正座してニコニコと会議に参加している。一方、小十郎はさっきからずっと黙って政宗の言葉に耳を傾けていた。



「よし、今日はこんなところだ!解散」


その政宗による掛け声で皆がぞろぞろと部屋を出ていくときに当たり前のように小十郎についていく名前だったが、いつもは嫌々でも歩調を名前に合わせてくれるのに今日はすたすたと先に行ってしまう。いくら同じ武士でもやっぱり女と男の歩く早さは違っていてもう小十郎の背中が小さくなっていった。


「…小十郎、さま?」


小十郎にたいして掛けた言葉もただ一人呟いただけになって誰にとどくこともなかった。すると次第に悲しみが込み上げてきて、耐えきれず大粒の涙になって流れていく。拭っても拭っても止まらない涙に戸惑って、でも止まらなくて。


「こじゅ、ろ、さま…」


「名前、」


その瞬間、後ろから声を掛けられた。まさか返ってくると思わなかった言葉に思わず体を震わせたけど、すぐに誰か声で分かる。声だけじゃない、抱き締められた、温もりで。


「泣かせたかった訳じゃねえんだ、」


返事をしようとしても、声が震えて出来なくて。小十郎さまの方を見たくても、体は言うことを聞かなくて。


「その、お前が…政宗様に、」


なんだか歯切れの悪い小十郎さまを不思議に思って、ぐっちゃぐちゃの顔だったけど顔が見たくてかなり身長差がある小十郎さまを見上げた。


「あの、政宗さまが…?」
「その…あれだ。分かれ。」
「…?あれ?」


小十郎に着物の袖で涙やら鼻水やらを拭かれながら今日あったことを必死に考えてみた。政宗さま、怒られた、お許しがでた、すきって、いっ…た


「あ、」
「…別に、そのなんだ。あれだ、怒ってたっつうか…」


やっぱり歯切れの悪い小十郎さま。耳の先まで真っ赤にさせて、大きな手で顔の半分を隠しながら、


「…お前は俺が、すきなんだろ?」


沸騰するんじゃないかってくらい顔が真っ赤だけど。小十郎さまは気付いていないかもしれないけど、さっきから実は握ってくれている手が嬉しくて。そんなあなたに伝えたい。









(なんだ、お前ら。廊下でいちゃついてんのか)(まっ政宗様!)(私、小十郎さまの方が大好きですからね!)





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こじゅさまー\(^^)/
お堅い感じが好きです!


080624 エコ