スキとキスの境界線




風が心地よく吹いて気持ちがいい。
ここがどこかなんて野暮なことは聞かないでいただきたい。
とりあえず、俺はリヒトと二人きりで、草むらで涼んでいた。



俺が草の上に座り込み、リヒトが俺の膝枕で寝ている。
風が吹くたび、ボサボサの髪が無造作に散らばって目を瞑っているとはいっても邪魔になるだろう。
この規則的な寝息が心地良いから、俺は風が吹くたびはらってやった。
もう何時間この体制でいただろう。
「眠い」といったリヒトを抱きしめて、半ば無理矢理膝枕して。
最初はやはり嫌がったリヒトも、時間が経つにつれ、眠気には勝てなかったようだ。
今ではちょっとのことでは起きないくらい、深い眠りについている。



「…カーワイ、リヒト」



返事なんて返って来ないけど。



「本当可愛いなぁリヒトは…凄く可愛い…」



頬を何度も撫でながら、愛おしいものを見る目で、何度も同じ言葉を呟く。
起きてるのかな?寝てるといいな。
だってこれは、偽りじゃないから。



「きっと、もしリヒトが起きてたら…そんなこといえないんだろうなぁ…ねぇリヒト」



シアンが微笑んで、リヒトに口付ける。



「…いつから気付いてた?」
「俺がリヒトの頬を撫でたあたりからかな?わかりやすいなぁリヒトは」
「…あれは心底気持ち悪かった」
「ひどいなぁ。あと、へたくそな寝たフリありがとう。やっと素直になれたよ」
「…そうかよ」



もう一度、リヒトの口をふさぐ。リヒトは真っ赤になって少しシアンを睨んだ。
シアンはまた笑って、リヒトを抱きしめる。



「お前…キスは恥ずかしげもなくできるのに…」
「さぁ、なんでだろ…俺にもわかんない」
「変な奴だなお前は」
「背中に羽生えてる奴には言われたくないんDEATHけどー」



そう言ってまたキスをせがむが、真っ赤になったリヒトがそれをこばむ。
シアンはそれが面白くないようで、草むらにリヒトを押し倒して、両手首を封じる。



「ちょっ、てめっ…シアン!」
「もー…リヒトは俺のコト嫌い?」
「んなわけねぇだろ、好きだよ。」
「…逆に何でリヒトはそういうことは言えるのさ?」



シアンが呆れたように呟く。
言われてみればそうだ。キスは恥ずかしいけど、好きならいえる。



「…さぁ、俺にもわかんねぇ」






そう笑って、草むらに押さえつけられた手を振り上げるとシアンが声を上げて尻餅をつく。




「…って、はぁ…意味分からない」
「お互い様だ。バカ」




お返しにとまた飛びついてきたシアンを得意の切り替えしで避けて、シアンの手首を掴む。
そして思い切り引き寄せ、軽いリップ音を鳴らして口付けた。
一瞬だけ。軽いキスだ。



「…リヒト?」
「…お前も言えよ、俺に…」



真っ赤になってうつむいて、シアンの手を握るリヒト。
シアンも同じく真っ赤になりながら、呟いた。





「…好き、だよ…」






風に消えそうな声で。





((やっぱり恥ずかしい…))







お互い格好つけてても、実際ただの弱虫なのかもしれない。




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Cyanの堀川さまに相互記念を頂きました!
な…なにこの可愛い生物たち…!本当にありがとうございますゆず気さん(*´∀`*)





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