たまには優しくしてあげる
産まれてこのかた1度たりとも欲しいものが手に入ったことなどない。オレの持っているものは得てしてくだらないものばかりで、しかしだからといってそれらを思い切りよく投げ棄てることもできない。だって何も失くなってしまう。オレはオレの消失に恐怖している。産まれてこのかた1度たりともオレの存在を保証してくれるものが手に入ったことなどない。
いま胸に抱いているお前だってそうだ。無限に伸びる時間軸の過去現在未来、お前がオレのものになる瞬間は存在しない。知っている。それでも手を伸ばしてしまうのはどうしてだろうね?
でも、今日のお前はいつもと違うから。弱々しくて痛々しくてとても見ていられない。たまには優しくしてあげる。だから今だけオレのものになってて。崩れゆく関係を想ってオレはそっと瞼を閉じた。
―――――
勇←吏←心で、ユーシさんに女が出来たとかそんなイメージ。