仲さまより

「お待たせしました・・・、先輩?」
「ぶはっ・・・!お前、休みの日もそれって!ぎゃはははははは!」
待ち合わせ場所につくと、先に先輩がいた。
彼は僕を見るなり、いきなり腹を抱えて笑い出す。
「あの・・・先輩。お待たせしてすいませんでした・・・」
もしや僕が遅刻したことをおこっているのか、と思い頭をさげるが先輩の笑い声は止まらない。
バシバシと折り曲げた背中を強くたたかれる。
「いや、そうじゃなくて・・・お前、休みの日もジャージなワケ?」
「はぁ、そうですけど。」
「え、ジャージ以外に服持ってないの?」
「制服と・・・あとは中学の時の体操服と制服、それから高校のジャージ、それと・・・」
「あー!もういい!それ以上言うな!」
僕が持っている服をさらけ出していると、先輩は僕の言葉を遮った。
「わかった!よし、今日はお前の服を買いに行こう!」
「え、今日は映画の予定じゃ・・・」
「映画ってことはある程度金は持ってるよな?」
「はい。」
「じゃぁ行くぞ!」
グイ、と強く先輩が僕の手をひく。先輩に手を握られたまま、僕たちは駆け出した。




「いらっしゃいませー」
無駄にキラキラとした店内。ここは確か、一度先輩に連れてこられたことがある。
確かあの時先輩は『特にいいものなかった』とかいいつつ、シャツを一枚買っていたような気がする。
「なぁ、メイジ。お前もしかして普通のTシャツも持ってないわけ?」
「Tシャツですか・・・最後に買ったのは1年ほど前ですかね・・・それと僕はメイジじゃありません鳴路です。」
「わかったわかった、なぁこのTシャツなんてどうだ?」
先輩が僕に差し出してくれたのは黒いTシャツ。
真ん中によくわからない英語が書かれている。後ろは特に文字が書かれている様子もなく、下の方に小さくプリントされたイラストがついているだけだった。
「別にそんなに派手なわけじゃねーし・・・これ1枚持ってるだけどもだいぶかわると思うんだが。」
「はぁ、先輩がそう言うんだったら大丈夫ですね、僕は先輩を信頼していますから。」
そうかよー、ありがとうと言いながら先輩は僕の肩をバシバシ叩く。
「じゃ、これは買うことにしてと。あとは・・・」
フラフラと先輩が店内をさまよう。僕は後ろをきっちりとついていった。



「ふぅ・・・結構買ったな!」
「はい。ありがとうございます。」
僕の右手と左手にはたくさんの紙袋がぶらさげられている。
あれから先輩につれられ2、3軒ほど店を周り色々と買い込んだ。
元々映画に行く予定だったので、財布はなんとかもった。
「次に俺と会うときは今日買った服を着てこいよ!」
「それは次にデートする時ということですか?」
「そーだよ!わかったか?」
ぐい、と先輩に引き寄せられる。先輩の大きな瞳が僕を見ている。
「わかりました。先輩の隣に立っていて恥ずかしくないようにします。」
「お、かっこいいこというね〜さすがメイジ!」
「鳴路です。」
「はは、ワリィワリィ。」
「それより先輩。まだ時間はありますか?もう少しお話したいのですが・・・」
「ん、いいぜ。」

スタスタと歩き、僕らは川辺に来ていた。
僕らの周りにも同じように買い物をして座っている二人組がたくさん見受けられる。
先輩が腰をおろした所の横に僕も腰をおろす。
「なんか新鮮だなー部活以外で会うって。」
「そうですね、こうやって先輩とたくさんお話できますし。」
チラリと先輩の方を見ると少し顔が赤らんでいる。夕日によく似合う横顔だと思ったが口にはださないでおいた。
「先輩・・・」
「なんだよ。」
「こっち向いてください。」
夕日によく似合う横顔がこちらを向く。また先輩の大きな瞳が僕を見ている。
「今日は買い物につきあっていただき、ありがとうございました。」
「いいよいいよ、俺も楽しかったし。また買い物しよーな。」
「はい。今日のお礼と言ってはなんですが、これ・・・」
僕はがさがさと買い物袋ではなく、自身の鞄を漁る。
今日のために前から用意していた物。映画に行ったら帰りに渡そうと決めていた物。
「日頃お世話になっている先輩にプレゼントです。あけてください。」
「え、いいのか?俺何もしてねーぞ?」
「いえ、あなたがいるだけで僕の心は安らぎ、幸せに満たされます。本当に感謝しています、先輩。大好きです。」
「なっ・・・大好きとか言うなよな、この野郎。」
僕から目をそらした先輩は袋をあける。
じゃらじゃら、と銀色のネックレスがでてきた。
「男性にネックレスをあげるか迷いましたが・・・他にいい物も思いつかなくて。」
「うわ・・・今時おしゃれでネックレスぐらいするぜ?ありがとう・・・大切にする。」
先輩が嬉しそうにこちらを見て笑う。僕もつられて嬉しくなり、顔がほころぶ。
「あ?これ文字入ってるじゃん。NK?」
「はい。僕たちの名前のイニシャルです。」
「なるほどなー粋なことしてくれるじゃん、メイジ。」
「いい加減鳴路というのも覚えてほしかったので。」
否定の声は聞かず、先輩はネックレスを首からつける。
「どう?」
「よくお似合いです。」
「ありがとよ。」



「次にデートする時は先輩はそのネックレスをつけてきてください。」
「お前は服、な。」





どちらからともなく立ち上がり、帰路についた。





君に約束、君と約束 次もその次もまた次も


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仲さん宅の8000hit記念フリリク企画に参加させて頂きました!素敵な小説ありがとうございました*´∀`*





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