ゆっくり家で寝てたかったが、結局学校に行くことになんなら早めについてもいいか。なんて考えた俺は通常より20分ほど早く家を出た。

教室に着てみれば案の定、運動部の朝練組の鞄だけが教室にあった。俺はこれなら静かに寝れるなと、鞄を机の横にかけて机に寝そべった。それでも15分もすればちらほらとクラスメイトたちが登校してきて、騒がしさに寝たふりを決め込んでた俺の背中を叩いてくる鬱陶しい奴らのおはようの声に少しだけ顔を上げて「うるせぇ」と返した。
顔を上げたときにいつもは既に学校に来ているはずのあいつがまだ着ていないことに気がついた。

今日は遅刻かそれとも休みか。なんて幼馴染の顔を思い浮かべてれば本人が慌てて教室に入ってきた。
どうやら遅刻ぎりぎりだったらしく少し息が切れている様子。
席に落ち着いた途端そいつが声をかけてくるもんだから俺は眠気を抑えながら会話をした。
はずだったが本気で眠かった。だからいつの間にか入ってきたらしい担任が点呼を取ってるとき寝ぼけて「いつの間に着たんだよ」なんてのが口から出た。教室に入ってきたこいつのいつもと違う様子には気づいてたってのに。

どういう意味で気にしたのかはしらねぇが、昨日なんとなく言った「前髪伸びたな」って俺の言葉を気にして前髪を切ってきたんなら、俺としてはすげぇおいしい。
こいつはこんぐらいの長さのが似合う。

けどそう思ってもなかなか言う気にはならない。まぁいい癖じゃないのはわかってるがこれは中々直らない。

けどこいつは昔っから俺と違って素直だ。顔を赤くしてまで気づいてと意思表示を送ってくる。

「シカ」

「なんかいつもと違くない?」
「何がだよ」
「だから、…えっと」

言う必要もねぇって思ってた。けど俺の言葉を気にして短くして着たこいつが馬鹿みてぇにかわいいからたまにはいいか。

「お前は、短い方がいい」

前髪ラバー

シカマルの些細なそれがわたしをしあわせにする。


20130403