知らん振りをしているのかと思えばそうでもなくシカマルは時々視線を送ってきた。

シカマルは基本授業中は寝ているけれど気がつけばノートはわかりやすく簡易に纏めているなんとも器用な男だ。最早うらやましいなんていう感情もこれまでの付き合いで出し尽くしてしまったらしく今はもう自分を諦めたように溜息しか吐けない。
はずだったのだが、これがいつの間にかかっこいいなんて感情になるのだから恋とはなんとも不思議なものである。

「シカ」

授業が終わってすぐ、机にべったりと張り付いて眠る気満々のようなシカマルに声をかけるとシカマルは「シカ言うな、」とすでに寝ぼけたような声で返事をした。

「なんかいつもと違くない?」
「何がだよ」
「だから、…えっと」

眠そうにしているシカマル。今なら恥ずかしい思いをせずに聞ける、と思ったわたしは切り出す予定のなかったことを思い切って切り出した。が、シカマルは上体を起こして、身体半分をこちらへ向けわたしの顔をじっと見るように聞き返してきた。

いつもはめんどくせーなんて何もかもどうでもいいような、何を考えているのかわからないような感じをかもし出しているくせに、急にそんな顔するなんて狡い。
ただひたすらこちらをじっと見てくるその真っ直ぐな表情。それだけでわたしは何も言えなくなってしまうのだ。
そんなじっと見つめて、本当はわたしの言いたいことがわかっている癖に、こうしてわたしに言わせるように笑うのね。

知らんぷりの殺人犯

意地が悪いシカマル。どうせわたしが素直に言えないことまでわかってるくせに、そうして聞くの。そんな風にされてもわたしはなんでもないって熱くなった顔を背けることしか出来ないのに。


20130403