幼馴染。けれど全くわたしには関心がないような。シカマルはわたしのすきな相手だ。

「おはよう」
「はよ」

遅刻しそうだと焦って教室に入れば先生が来ていないのか教室はまだざわざわと賑わいでいた。クラスメイトの半分以上が席を立っていて、それぞれが仲のいいグループで集まっている。そんな中わたしは走ってここまできたお陰で喋っていようなんて元気はなく、椅子を引いて席に座った。斜め後ろの席であるシカマルに声を掛ける。

なのにシカマルは挨拶をしても寝ぼけたような声で適当な声だけを出して机につっぷしたままだ。どれだけわたしに興味がないのか。
こちらは興味があって仕方ないというのに。

「いつの間に来たんだよ」

担任の先生が教室に入って来て、クラスメイトたちはそれぞれの席に座った。
先生の点呼をとる声に紛れるようにシカマルが呟く。

「さっきおはようって言った」
「んだっけか」

「そうです」

そんなやり取りをしながら、シカマルの視線がちらりとわたしの前髪へとあがった気がした。
そう。わたしが今日遅刻しそうになったのもそれが原因。昨日シカマルが「前髪伸びたな」なんて言うから出かける前に急に気になって慌てて切ってきたのだ。

我ながら馬鹿みたいだとは思うけれどもそんな些細な一言が気になって仕方ない。存在意義のない、いつ買ったのかわからないカット用の挟みを使ってみようという気になってしまうのだ。なんて言っても相手はただの幼馴染。それ以上の発展は未だ見込みなし。

気づいてたでしょ

けれど「前髪切ったのか」くらいは言ってくれてもいいと思う。


ジーゼル
20130403