あなたはきれいね。
ぶれない瞳でわたしをみて汚れてない澄んだ声でわたしをすきだと言うのね。

美術室の隣の教室には名前の知らないひとの銅像やニス、油絵の具などの授業では使ったことのないものがいっぱい置かれてある。
使ったこともないし授業でも習っていないから用途くらいしかわからないけど、この準備室は色々な匂いが混ざっていて凄く興奮を覚える。
もしかしたら入ったらいけない場所だからという優越感かもしれない。

「駄目」
教室にもある生徒用の椅子に腰を掛けているわたしの首筋に、サスケくんが立ったまま屈んで顔を埋めた。
左手がそっと首に触れている。さっきまで頬に触れていた右手が耳の裏の髪を梳かしてそのまま耳に掛けた。
首筋に顔を埋めていた彼は少し離れてわたしを見た。
目が澄んでる。
香水をつけていない彼からは風で薄まった洗剤と人間特有の香りがした。心臓がどくどくと音を立てている。
わたしの音かもしれないけど、よくないことをしてるってわかっているサスケくんの音かもしれない。
サスケくんの顔がちょっといやらしいから。
興奮しているような息遣いが聞こえる。そしてそれを落ち着かせようとしているのもわかる。

「名前にもっと触りたい」
サスケくんがそう言いながらわたしにキスをした。触れるだけのキスが、気持ちいい。
唇と唇の表面だけが触れ合って、感触を少し味わうように数秒そのまま、そして離れる。
これだけが凄く愛を共有しているみたい。

「駄目」
「なんで」
それ以上は駄目、とわたしがサスケくんの肩を押すとサスケくんは怪訝な顔をした。
怒っているというより拗ねているみたい。

「駄目なの」
「俺のことすきじゃないのかよ」
「すき」
「じゃあなんで」
「すきだからしたくないの。キスとか、ちょっと触るだけしか」
「意味わかんねぇよ」
「…汚したくないの」
「そんなのどっちも同じだろ」
「違う。…ごめん意味わからないよね、でも駄目なの」


手に入れたいなら離れてて

ここまでは沢山したいけど、これ以上はわたしでサスケくんを汚くしちゃうから。
でもね、わたしはサスケくんがすきだし触れたい。ここまでならわたしはずっとサスケくんのでいられるから。


19さい
20120601