「サソリ?」
「ん」
押し付けていた唇を離してサソリを見上げるとサソリは私を見ながら雑に髪を撫でてきた。床に膝をついた状態で椅子に座っているサソリを見上げるといつも以上に睫毛が長く見える。
キスをしたばかりだからか、濡れている唇が余計に色づいて見えて私はそれがどうしてもやらしいものに見えてしまう。

「付き合ってはくれないの?」
「ああ」
直ぐに返ってきた言葉に思わずなんで、と問い返すとサソリは右手の甲で唇を拭いながら口角をあげた。

「俺は自分以上に名前を愛せねぇしな」
それでもいいよ、と言ってしまいそうになった自分はなんて名称に拘っているんだと愚かしくなった。自分以上に誰かを愛す、なんて私自身できているのかわからない。それこそサソリの言い分を聞いても尚それでもいいと言ってしまいそうになった私は自分のことしか考えていないのではないかとも思う。

「じゃあ、今のままでいい」
「ああ」
視線を落とすサソリ。私の後頭部に回してきた腕に身を委ねるように目を瞑るとやわらかい唇が触れて合わさって、吐息が混ざった。

最愛を知りなさい

私たちは青い。

花は眠りて愛を待つ 20120403