どのくらい会ってないんだろう。
そんなことを考えても、なかなか答えは出ない。
答えが出ないくらい会ってないんだと思うと少し、感慨深いものがあった。
学生の頃は嫌でも毎日のように会っていたし、会おうとしなくても廊下ですれ違うなんて当たり前だった。
高校の頃だって帰り道自転車に乗っているときに会ったり、すれ違うことは合った。それなのにこんなにも会ってないというのは不思議に感じられるレベルだ。

だからこそなんだろう。私の中に渦巻くこの疑問とも期待とも思えるこの感情が生まれるのは。
それを、疑問としてカカシに尋ねたら私は狡くなるのか。
昔なら、高校のときの私なら素直にカカシに聞くことが出来ただろうか。
そんなの、高校を卒業してしまった今の私には、どんなに考えたところで答えは出ないのだろう。

「ねぇカカシ」
「ん」
「いきなり、電話なんてどうしたの」

久しぶりに聞いた名前の声が、記憶と全然変わっていなくて、安心した。
でもそれとほぼ同時に、名前が記憶より女の声だということに焦りを感じた。

突然、昔隠した宝物を思い出したように名前の声が聞きたくなって電話を掛けた俺は、もしかして遅かったのかも。と、もしかしたら名前はもう誰かのになっているのかなと思った。

実際、そうだとしたら臆病者な俺は何も行動しないのだろう。
だから言えるのはほんの少しのことだけだ。

声、聞きたいと思って

せめて伝えようかと思ったことだけは言葉にしよう。
受話器越しの名前の声が嬉しそうに、「私も、聞きたかったかも」なんて言うから、少しだけ泣きたくなった。


20130203