「なんで、ここに」
あ、わたしここで死ぬんだ。
そういう勘が働いたんだと思う。もしかしたらほんの少し、自分の希望もあったかもしれない。
「お前には関係ない」
任務に行く途中だった。わたしは別の任務が終了してからの合流という形だったので周りには誰もいない。ならば、視界の端に彼の後姿が映ったときに増援を呼べばよかったのだ。
けれど、しなかったのは。わたしがひとりで彼の後を追ったのは。

「確かに、サスケからしたら関係ないよね。でもわたしは」
「黙れ」
大岩の上に立っているサスケを見上げるようにして、形だけクナイを構えた。本当は印を結んだほうがよかったのだろう。
けれどそんな事は出来ないのだ。それが増援を呼ばなかった理由。

アカデミーの頃ただの一度だけ、わたしはサスケのことがすきで、周りとの差を彼の中につけたくてふいのキスをした。
勿論嫌そうな顔はされてしまったわけだけど、サスケは苦そうな顔で頭をぽんと一度撫でたのだ。
「なんでお前の方がんな顔してんだ」

そのときわたしは一体どんな顔をしていたの?
困らせて怒られないなんて狡いよね。ごめんね。ありがとう。

瞬きをした一時で距離をつめられる。サスケの手から千鳥の光が見える。至近距離だとこんなにきれいなのね。
鳥のさえずりのような音が遅れて聞こえた。




「ね、なんでここに居たの」木の葉に凄く近いね。なにかに引き寄せられたの?
ナルト?サクラ?それともなんてのはないか。

「…お前には関係ない」

そうだね。
でも少なくともわたしはすきだったなぁ。

あのときと同じ表情。深くは変ってないって希望を連れて行くのは許して。皆の代わりに。


告別
20130115