「こっちを向け」
「嫌」
「お前の意思は聞いていない」
意地を張っているわたしにマダラさんがやさしく話し掛けるから、涙が滲みそうになる。
今回も今までもわたしがこうなる理由はひとつ。自分の気持ちがこの人の気持ちより大きいんじゃないかって思いしらされるからだ。
でも冷静になるとわかるの。
そんなの比べられるようなものじゃない。
だけど今はこの人が目の前にいるから、冷静になれないのだ。
だってそんなこと、口に出来る勇気がない。きっと馬鹿だと思われるだけ。恥ずかしくて、虚しくて涙が溢れそうになるから。
「俺のことを見ろ」
「…」
向かい合ってるこの状況ではいつまでも下を向いてるのも限度がある。背中は既に壁に当たっている。
「おい」
「…マ、」
痺れを切らしたのか強引に顎を引かれた。そしてそのまま荒く唇を塞がれる。こちらのペースなんてお構い無しに強引なのに触れる唇はやさしくて、堪えてた涙が瞼の裏に溜まった。
「んんっ」
両頬を手のひらで包むようにされ、角度を変えて何度も何度も口内の奥までマダラさんの舌に浸食される。それがあまりにわたしの感情をかき乱すから、悔しくてマダラさんの顔を見るために薄らと目を開けた。

映ったのは、必死な表情でわたしを求めているマダラさんだった。


愛は決して測れるものではなく、囁き合うものなのだ。誰に見せるでも、示すでもなくただ息をするように。


20130114