「はぁ」
大きく溜息を吐けばベッドに座り壁に寄りかかって本を読んでいるはたけがだるそうに顔を上げた。
「なに、これ見よがしに」
はたけも溜息を吐き、これまた面倒くさそうにわたしを見た。
「だってクリスマスだよ?」
「そうだね」
「わたし、はたけのことすきって言ったじゃん」
「確かに言われたね。高校卒業したときだっけ」
「そう。まぁふられたけど。…けどね、友達ならいいよって言われて、クリスマスイブの今日だって一緒にいる」
「いるね」
「なのに同じ部屋にいてやることは別々、話もしないってなに。ちょっとは期待したのに」
今日半日、はたけの部屋に着てからの時間だ。
最初こそ、そわそわと期待したけど後半はもうぐるぐるとそんなことばかりを考えていた。確かに、前回会ったときだってそんな甘い瞬間があったわけでもなかった。結局から周りだったのだ。けど、それならそうとそんなつもりはないという釘を刺してくれればよかったのだ。
「なんだそんなこと」
「そんなこと…じゃあないんだけどなぁ」
はたけの言葉にがっかりとはしたけれど、そう言いながらも本を閉じてくれた。それだけがなんだかんだ言ってやさしいなぁとほだされてしまう。これじゃわたしは駄目女だ。
そう思って落ち込んでいるとはたけはベッドから降りてきてわたしの近くに着た。そのままかがんでわたしの顔を覗き込み目をじっと見てその薄い唇を少しだけ開いた。
「俺はね、この部屋で名前とふたりきりで居られればそれだけでいいクリスマスイブを過ごせるの。…名前は違うの?」

「…」
「なんて、俺に言ってほしいわけ?」
息を呑む。追い討ちをかけられたからじゃない。引っ掛けだってわかっていたのにその甘さに頭がくらんでしまったから。さっきの瞳、揺らぎようまでを計算していたのか。それともクリスマスイブのマジックだろうか。
「言っては、ほしい」
「ふーん」
「でも、わたしにじゃないと意味ないし」
「じゃ、まぁ頑張って来年までに俺のことを落としなさい」
そう言うはたけがあまりにカッコよく見えてしまったからわたしは悔しくて頭だけで頷く。するとはたけはわたしの頭をぐしゃぐしゃっと撫でた。
「ま、こんな俺でもすきだと思っちゃうんだから諦めなさい」
「そう、ね」
ほんっと、嫌なくらい良い男。

けどね、俺は思うよ。
需要はあるが愛はない
俺にすかれたいって一生懸命に無い頭ひねってる名前がかわいいよね、ってさ。


20130112/19さい