「何年になったっけ」
今日何日だったっけと、尋ねるのと同じようにカカシはそう呟いた。
「こうなってから?」
「こうなってから」
曖昧な聞き方をしたのはわたしたちの関係が本当に曖昧だからだ。アカデミーからぐだぐだと長い付き合いをしているのに、わたしたちは異性に対する接し方をしないままこの年齢になっている。
もしかしたら異性としてみないように心のどこかで決めていたのかもしれない。
兎に角カカシの傍は居心地が良すぎて、ずっとまどろんでいたくなるのだ。

「大分」
「それじゃ聞いた意味がないでしょうが」
「えー…じゃあ、可愛げのなかったあなたがやわらかくなるくらいの年月ですよ」
「そう言われるとこれ以上掘り返したくなくなるね」
くしゃり。仕方ないなぁと言うような言葉のやわらかさだった。
「で」
「ん?」
「いきなりなんなのそんなこと聞いて」
「…あー…まぁね」
「なに」

「そろそろね」
「うん」
さっきカカシが入れてくれたコーヒーを手で包むように持ち、見つめながらふーと息を吐きつつカップ越しにカカシを見る。
「身を固めようかなと」
「…」
「…」
「え、結婚するの?カカシが」
「うん」
「誰と?」
「…ばか」

ばかですか愛ですか

あの時カカシの言いたいことに気づいてはいたけど、恥ずかしくて誤魔化したんだよ。そう後々伝えればカカシはそんなの気づいてたよ。そんなお前が可愛くてどうしようもなくなった俺自身に言ったばかだったからね。
言われてわたしはまた恥ずかしくなった。


深爪 20121212