やわらかい。そう思いながら未だベッドに体を沈めて死んでしまったように眠っている名前を後ろから抱きしめ、掌の中に包み込んだ胸をやわやわを触っていれば、手の甲に急な痛みが走った。

「痛ったい!」
「何当たり前みたいに触ってんの」
「だって、僕たち恋人じゃないですか…」
「だってじゃない」

抓られた手の甲をもう片方の手で撫で、直ぐに消えた痛みを忘れてまた名前の細い体を後ろから包み込むと名前の呼吸音が聞えてきて、それが心音と重なっているようで妙に心地がいい。名前の頭を引き寄せ、ごろり寝返りを打たせて腕枕をしてやると「この枕硬い」とくふくふ笑う名前の声が耳を擽る。


「名前さんがその気になってくれれば僕の息子もまた硬「盛るな」
「痛っ、痛い、痛いです名前さん…」

馬鹿なことを言おうとしていたトビの脛辺りをこつんと蹴れば眉間に皺を寄せてトビが身を捩った。それを見て笑えば眉を下げて「僕が悪う御座いました」と奴は笑うのだ。すすすとその胸板に体を寄せれば再び私を包む腕に安心して眠ろう。
僕を構成する要素

名前に寄って沸々と生まれ出る幾多の欲望とほんの少しの加虐心。



虫喰い
20121203