仕事帰りの話だった。
残業で大分遅くまで残っていた私と同僚のはたけはなんだか疲れたから飲みたいねと話をしながら近場の駅まで歩いていた。
「外で飲むと高いよね」
そりゃまぁその通りで、同じ試練(残業)を乗り越えてすっかり同調していた私は提案をした。
「じゃあ私の家で飲む?」
コンビニで買っていけば安いし家も結構近いし。はたけは言う。
「いいの?こんな時間から上がっても」
「一人暮らしだからね〜」
幸いはたけが住んでいるところと私が住んでいるところは同じ駅の側だった。
そうして流れるように話はまとまり電車を降りてマンション近場のコンビニで適当にアルコールとつまみを買ってマンションで飲み始めた。
筈だったのに。
「ちょ、ちょっとはたけさん?」
「なによ」
「なによじゃなくてですね、あの状況わかってます?」
「…名前こそわかってんの?」
スウェット姿の私の上にスーツの上だけを脱いだはたけが覆いかぶさっている。どう見てもこれは酔った勢いという奴で。というかいつもは私のことだって名字呼びなのにこういう時に名前で呼ぶというのは狡い男というものではないだろうか。
「…なにが?」
「ん?俺が男だってこと」
身体が固まる。どうにかこの場を乗り切る言葉を探していると後頭部に腕が回ってきた。
近づいたはたけはアルコールくさい。きっと私も。
「わかって…っんん」
…狡い。重ねられた唇。鼻を掠めるアルコールとムスクの匂い。
唇は容易くこじ開けられてしまう。
逃げようとする舌を追いかけて絡められると力が抜けてしまう。どうしようはたけってキスが上手い。
「は、っあぁ」
唇が離れる。酸素を求めるように肺が大きく上下した。
「わかってない」
やわい頬が赤くなる
俺は名前を異性としてすきなはたけなんだよ。
臍
20121124