: ・. 造形的に美しいのとは違うけれど彼女、名字さんの横顔はきれいだなとよく思う。 一回目は、ああきれいだなと思った。 それが何度かあるとああ、ボクは彼女のことがすきだったんだなって気付いた。 そうなったときは大抵がもう遅いときで、やはり彼女のときも遅かった。 どの人にどのくらい興味があってどのくらい好意を抱いているかなんてふとしたときにしかわからないし、ボクの場合はそれが顕著で恋愛だと手遅れ。つまり彼女に恋人が居る場合が多い。 「サイ君」 「どうしたの」 隣のクラスであるナルトが掃除当番で遅くなるらしく、放課後それに付き合うことになったボクは、やることもなく席に座っていた。 すると彼女の声がした。ボクに声を掛けてきたんだ。 少し下を向いていたらしいボクが顔を上げると中学生みたいに緊張している自分がいて内心笑えた。相手はもう恋人が居るのに。 「鍵、もう直ぐ閉めるって先生が言ってたから…」 「ああ。じゃあそろそろ出た方がいいかな」 「うん。窓、開けっ放しでいると風邪引くよ。まだちょっと寒いしね」 「そうですね」 ただの世間話がなんてきれいに聞こえるんだろう。と、思うのはボクの耳か彼女にだけ贔屓をしているせいだろうか。 普通の気遣いが何故かとても親切なように思えるのはボクがただそう思いたいだけなんだろうなぁ。 「じゃあ私そろそろ帰るから。また明日」 「また明日」 手を振って口角を上げた彼女は正面から見てもやっぱりきれいだった。色のついていない笑顔という表現が似合っている。あの彼と帰るのだろうか。そう思うとやっぱり気が沈むボクがいて図々しいなぁと思う。 ボクはただのクラスメイトなのに、ほんとわからないなぁ。 ここから手を伸ばしてあなたに触れるほどぼくはあなたとの溝に埋もれるのだ ああ、後姿もきれいだ。 へそ 20120910 |