姿勢の悪くなりそうに丸まっている背中を横目にわたしは赤毛の隣に腰を下ろした。意外なことにパーツの整備はしてないようだったが隣に座るなりじろりと睨まれたので機嫌はいつも通りなのだろう。
「なにか用か」
「特には」
「なら勝手に入ってくんじゃねぇよ」
前言撤回。どうやら機嫌は良いようだ。何時もならここで軽く殴られるか忠告される前に追い出される。
「機嫌良いね」
「は?」
何言ってんだこいつという顔で見られたがそれが今のわたしには照れ隠しにしかみえなくなっているのでこの中年が可愛いとさえ感じる。
「そんな目で見つめても出て行かないよ」
「見つめてねぇよ。脳味噌腐ってんのか」
「腐ってないから。まあ取り敢えずさ、サソリ」
「だからなんだよ」
「誕生日おめでとう」
「…」
「?聞こえなかった? 誕生「聞こえてるっての」
「あ、うん」
訝しんでいる様な表情でこちらを見ては小さくしかししっかりとため息を吐いた。
いつも通り眉間に皺を寄せているサソリにわたしも内心ため息を吐きたくなった。誕生日がきたところでサソリの外見はきっとずっと変わらないだろうし歳を重ねた証もない。まして犯罪者である自分たちにプレゼントという物は似合わない。結局贈るのは言葉くらいで充分だ。だけどそれが少しばかり寂しい。
「物はねぇのかよ」
「ないよ」
「ちっ」

くすむ声帯

舌打ち直後舌打ちよりも小さく聞こえたありがとの言葉はサソリらしくなくて笑えた。見るとサソリの眉間の皺はいつもより深くなっていた。


ごめんねママ 20111109