「せーんぱい」
声のした方を振り向けば、思い描いていた面がそこに立っていた。何かよくわからないが嬉しそうな動きをしている。
「どうしたの」
「聞いてくださいよ」
という言葉から始まった話はやたらと長かったが、簡潔に纏めると「次の任務、僕と先輩で行けるみたいです」だった。
正直その報告をされてもわたしは困ってしまう。というのも、数日前の夜にすきだと囁かれたからだ。今のように明るい感じだったらさらっと流せたものを、そのときは何故かとてつもなく大きな衝撃が走るほど、落ち着いた声色だったのだ。
「すきです」
それでもトビの声だと認識できる、ただ単調なだけの声だったけれどわたしはそれまでトビのそんな声を聞いたことが無かった為に、動揺の時間を少しばかり引きずっていたのだ。
「そっかー…そう言えばわたし、トビの戦闘してる所見たこと無いかも」
「あはは。任せてる方が楽なんですよねー」
「じゃあわたしはひとりで任務をすることになるのかな」
「どうでしょーねー」
へらへらした喋りを聞いていると安心するのはこれ以上心を乱されたくないからだ。身内であるトビにこんなに揺さぶられてしまうのはどうなのだろうか。暁失格とも取れるかもしれない。が、誰にばれるわけではないので気にはしない。

「せめてわたしが殺されそうになったときは助けてよね」
「そうっすねー…そのときは」

俺が殺してやる。


ゴースト 20120831