不思議な銀髪男は次の日も来た。
そもそも私が何故入院しているのか、自分でもよくはわからなかったので見舞いのつもりで着ているのだろうその男に尋ねると質問の答えではなく又衝撃的な言葉が返ってきた。
「今日で退院出来るみたいだから必要の無い荷物は持って行くよ」
「え、なんであなたが。大体私あなたの名前も知らないんだけど」

名前どころか何も知らない。というより昨日今日しか会話した覚えはない。そんな男に荷物を持っていかれるなんてこと有り得る訳が無い。そんな私の心情が通じたのだろう。というより表情にでていたのだろう。男は頭をポリポリと掻いてベッドを囲う為のカーテンの脇に立ち、片足に体重を掻けて少し言い辛そうに口を開いた(とは言っても相変わらず顔布はしていたが)。

「俺の名前ははたけカカシ。ユナは俺の恋人だから俺が荷物を持っていくのはなんら不思議なことじゃないよ。元々一緒に住んでたんだし、他に行く所もないでしょ」

あったら俺が困るけど。そう目を細めて言う男基はたけさんの言う事に私は目から鱗状態だ。名前もしらない私と彼が恋人同士。一緒に住んで居た。そのどれもが記憶にない。ということは私が記憶喪失になっているのかはたけさんが嘘を吐いているということだ。しかし彼が嘘を吐くメリットは多分無い。となるときっと後者のわけだけど、全くもって現状についていけない。

「って急に言われてもわからないだろうから五代目から話を聞くといい」
「五代目…」
「俺がここに来たときには既に病院内に居るみたいだったからそろそろくるでしょ「目が覚めたか」

「はい。丁度その話をしていました」
「そうか」
カツカツとヒールを響かせてはたけさんの脇に立っている金髪の女性。細身で巨乳のこの人が火影。白衣を靡かせて目には強い意志を宿しているどっしりとした女性。女の私から見てもかっこいいと思える。

「カカシから話を聞いたなら早い。お前はもう退院だ。家に帰ってもいいぞ」
「え、あの家って」
「だから俺の家でしょ」
「え、でも私」
「お前は記憶を失っては居るが生活するには何ら問題ない。後はカカシに任せれば大丈夫だ」

とんとん拍子に事が運ぶ。はたけさんが一度病室を出、私は寝巻きから服に着替え、はたけさんが再び病室に入ってくる。
病室で目が覚めてから2日。あまり広げていない荷物は寝巻きを仕舞ったら終わりだ。纏った荷物を手に持ってベッドから離れると横を歩くはたけさんに無言で持って行かれた。軽々と荷物を持つ横顔に男のひとだ、と思いながら私は半歩ほど私より前を歩くはたけさんに着いていく。

名前、仕事は多分…格好から見て忍。それ以外何も知らない男の人と生活なんて、元々恋人だったとしても考えられない。だって私には記憶が無いのだから。寧ろ嫌悪感に近い感情しか無いというのに。


20110224
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