それから幾日かはたけさんは帰らない日が続いた。任務なのだから仕方ないとはわかっているし、それを言っても彼を困らせてしまうだけだと知っているから口には出さないけれど、どうしても焦ってしまう。
あれから何度も五代目さまの所に通ったけれど生活には何も支障が無いと言われた。心配する必要も無いと。けれど、底知れない不安が背後から迫ってくるのだ。
はたけさんに悲しんで欲しくないと言うのは確かに本音なのだけど、正直に言うなら「はたけさんを悲しませる自分で在りたくない」のだ。
あの日記を見てわたしはずっと心臓を誰かに掴まれているようだった。所々紙面はふやけただろう跡があって、それは聞かなくても容易に想像がついてしまう。
わたしなら何度、どれほど泣いてしまうだろう。生活に支障が出るほど、考えようとしていなくてもふとした時に涙が勝手に出てしまうかもしれない。
寧ろその可能性のほうが高い。
けれどはたけさんはわたしの前では数えるほどにしか泣かないのだ。

泣くことが強いとか弱いなんて判断できるものではないのはわかっているのだ。わかっている。だけれどわたしには出来ない。それでいてわたし(相手)を気遣ってくれていることだから、わたしがわたしのままである内はせめて。

あいしてもいいでしょうか。
そんなこと、聞けないから密かに抱かせて。

早く会いたい。


20120904
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