「参ったな…」

隣で眠っているユナの寝顔を見ると思わず、そんな呟きが漏れた。
また、沢山泣かせてしまった。何度だって、泣かせたくないって思っているのに何でかな、毎度思うようにはいかなくて、何度だって泣かせてしまうね。
けど、俺は君を泣かせてしまうたびにいとしいって思うんだ。

そして何度だって思う。もう、忘れないでくれと。

「はたけさん」
いつから起きてたのだろうか。そっと目を開けたユナと目が合って名前が呼ばれる。この呼ばれ方をしたことは何度か過去にあったけれど最初がカカシだっただけに少し擽ったい。今はそれさえいとおしいけど。
そっと布団の中から出した腕が俺の顔まで伸びてくる。
気がつくと彼女は俺の目元に指先を触れてそこをそっと撫でた。それが涙を拭われたのだという認識に変わると俺はどうにもなんて言ったらいいのかわからなくなる。

「ごめんなさい」
俺はいつ泣いたんだろうね。それさえわからないほど、常に君がいとしいし、悲しいんだよ。
「ユナが謝ることじゃないでしょ」
「それしか出てこないから」
「でも俺は別の言葉が聞きたいよ」

「なんて?」
「聞かなくてもわかるでしょ?」

狡いかな。でも、このくらいは許されるでしょ?何度だって君を振り向かせるって思ってるし、意地でもそうさせるけど毎度不安はあるんだよ。
そしてそれと同時にね、どうしようもないくらい馬鹿なことを考える。
君こそがもし俺の敵だったとしたなら、俺は完全に負けるしかないし、既にもう負けてるよねって。
だって例え君がクナイを俺に向けたとしたって俺はクナイを抜けないし、君に対して写輪眼を使う気にはなれないんだ。

くしゃり。困ったように、寂しそうに、眉を下げるユナの髪の毛を指先で梳かすと目が合って、いい歳して俺は心臓を握られるんだ。

「あなたが、すき」

ああ。

俺もすきだよ。
多分、君が思っているより、ずっと。ずうっとね。


20120625
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