気紛れだ。
カカシ先輩に誘われた飲みで彼女と初めて会ったときからその印象は変わらない。
それを急に思い出したのは深夜になって任務だと呼び出された僕が火影邸へと向かっている途中。自棄に追ってくる視線があった。
視線の先を面の隙間から見ると、そこには見知った彼女の目が合ったのだ。




「もう終わったの」
急に入った任務を終えて木の葉に戻ると、彼女に会って開口一番問われた。
出発前に彼女を見ただけになんとなく居づらいなぁ。思いながらも顔には出さない。
「今ね」
「ふーん」
「何か用でもあったのかい?」
今まで何度か会っているけれど、いつの間にか彼女が隣の席に来ているときは周りも立っていたり移動したりそんな時で、書く言う僕も先輩に勧められるままに飲んで大分出来上がってしまっていることが多いから記憶も所々だ。飲みの席以外で会うことはあまりないし、会っても挨拶程度。正直話題がない。

「…用って程でもないけど」
「なんだい?」
なんとなくハキハキとしたイメージの彼女がそう濁したので、やんわりと尋ねてみた。

「あなたの」
「うん?」
「顔が見たくて」

花びらに似た誰か

控え目に呟かれた彼女の言葉が、窓から吹き込んでくる春風のようだ。気紛れの発言だろうとわかってはいるのに、僕は駄目だ。こういうことに慣れてる先輩みたいには居られない。

動揺して彼女…百井さんの言葉に反応を返すのが少しばかり遅れてしまった。

「僕をからかっているつもりかい?」


20130324