目が冴えていた。

長く感じた三日間の任務も今日…否日付が変わっているのだから昨日か。昨日の十八時に終えたばかりで疲れきっていたはずなのに。
シャワーで汚れやら汗やら疲れを落としたとはいえ、ずっと緊張状態だったのだ。何故睡魔が襲って来ないのだろうか。
布団に入ってから一時間以上経っている。目を瞑ってみてもその気配は全くなくて、わたしは諦めたように一度状態を起こした。
状態を起こすと、ベッドの直ぐ側の窓から屋根の上を走る幾つかの姿が見えた。

あれは暗部だな。
あの急ぎようでは緊急の任務でも入ったのかもしれない。暗部とは殆ど繋がりのないわたしには、不確定な予測しかできなかった。

走っていた数人の姿が視界から消えて数分後、再び別の数人が走っていくのがみえた。その先頭。見覚えのある走り方、後ろ髪。
…テンゾウか。

数少ない暗部の知り合い。よく話すわけでもないけど、何人かで数回飲みに行った。あたりさわりがないようで、敬語口調で、独特の雰囲気がある。

少しばかり知りたい気を起こさせる…こんな時間にぐだくだと考える内容ではないか。

窓の隙間から入り込んでくる、ほんの少し今までより温い風がさっさと寝ろと言っているようでわたしは重力にまかせるようにバフッと倒れこんだ。

春の息吹

眠ればよかった。頭から離れなくなりそう。


夜途 20130324