長期の任務を終えてアジトに戻ると、同じく任務から帰ってきたのだろうトビさんに声を掛けられた。
「お疲れ様です」
暁に所属するようになって数ヶ月。一番下っ端のわたしは、まだ構成員全ての人と会話をするほど打ち解けていない。
唯一、トビさんだけは例外で任務には関係ない話も出来るくらいは話をした。一番の理由は任務のすれ違いがあまりない為きっかけが作りやすかったというもの。ただこれだけでわたしは暁という組織の中で居場所が出来たような安心感を得た。
犯罪組織の中でそんなもの必要かと聞かれると間は空くけれど、ないよりはあったほうがやはり居心地がいい。そしてわたしはこのひとに惹かれているので、トビさんが居場所となったことが酷くしあわせなのだ。
しかしそれはとても曖昧。
すきになったきっかけは、よく話をするようになったからではない。暁に所属して初めての任務でトビさんと組んだことがきっかけだ。主にトビさんは面倒がって動かなかったけれど、一度。
一瞬、だ。敵にクナイを投げたときの仮面から除いた瞳。崩れ落ちた敵を見下ろした瞳。それにやられたのだ。
言葉にすると酷く安っぽいがこれだけが理由。
「トビさん」
「はいはい」
「また今度トビさんと任務にいきたいです」
いつだってあなたのそばで息絶えるための段取りを考えてている
「ま、機会があったらね」
そして死んだわたしをあの瞳で見つめてほしいの。
告別 20130115