甘く苦しい息を継ぐ

肌寒くなってきた。
そう思って見上げた空は、先月の青みの強さが伺えるものとは大分違っていた。
空の色からも涼しさが見え隠れする、そんな感傷に引き込まれそうな空だった。


その日は、布団が薄かったせいか肌寒くて早くに目が覚めた。基本的にぬくぬくと眠るのがすきなわたしは、そんなことがとても珍しくて、気分のまま早くに家を出て学校へと向かった。
それが間違いだとは今も思わないけれど、馬鹿だとはほんのりと思う。
数メートル先に風で微かに靡いた赤毛が見えたのだ。
「おはよ」
足早に近づいてそう言えば欠伸をしながらサソリが振り向いた。サソリとは気がついたらなんだか縁があった。小学校から高校まで一緒。世間で言う幼馴染というものだが私はこっそりと別の感情も抱いたりしている。
「はよ」
なんだトゲコかと呟きながらもぶっきらぼうにそう言うだけが胸の奥を疼かしてくる。それをこいつは知らないんだろうなぁ。けどそれが何故かしあわせにも思える。恋愛感情はなんて不思議なのだろう。しあわせとふしあわせがいつも背中合わせだ。
ずっとこんな関係で居たいとも思うし、進展できたらいいなぁとも思う。
「ねぇ、今日いつもより一限分少ないから帰りにどこか一緒行かない?」
「あー…」
間が空いて直ぐに失敗したと思う私は多分狡い。
「あ、気分じゃない?」
「や、気分じゃないっつ−か彼女と予定あっから」
「あ…そっかぁ」
「悪いな」
きっと失敗したからって逃げようとしたから罰が下ったんだ。視界が滲みそうになって下唇を噛んだ。
サソリに彼女が出来たのは知らなかったけど、ぶっきらぼうの癖に意外と面倒見もよかったりするしさり気無いとこでやさしかったりとサソリはカッコいい。だから仕方ない。
仕方ない。のんびり足踏みしてた私も悪い。

わかってる。ただね、サソリの隣に私の居場所が無くなったのだけが寂しいよ。


不在証明
20121003



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