休憩所に来るなりそう言って俺の横に腰掛けたトゲコがやけに機嫌のいい笑みを浮かべているから何かあるのかと感づく。が、本人がとても言いたそうにしているので俺はそれを促すべく「なんかあったわけ」と、本を閉じてしまいながら向かい合うように体の方向を変えた。
「お茶、しようと思ってお菓子をつくったの」
「へぇ、久々じゃない」
「気が乗ったの。そしたらカカシがさっき任務から帰ってきたって言うじゃない。だからここかと思ってもってきたのよ」
透明な袋にラッピングされたブラウニーを俺に渡してトゲコは誇らしげにタンブラーを見せてきた。
「勿論コーヒーもあるわよ」
「準備がいいね」
「まあね」
口布を下ろしてブラウニーを食べると、以前もらったときと同じ味がして、懐かしさと甘さについほくそ笑んだ。
「どう?」
「うん。おいしいよ」
「ありがとう」
「あ、はいコーヒ…んっ」
「トゲコ…」
∴形を確かめるように
コーヒーを俺に渡そうと顔を近づけてきたトゲコの唇にそっとキスをした。
「…いきなり」
「したくなったの。駄目だった?」
したくもなるでしょ。乗り気になってつくってくれたのも、わざわざ俺を捜してくれたのも今日が2月14日だからだろうから。
「そんなわけないでしょ」
わかりきっていながらも敢えて言ってほしくてそう聞けば、トゲコは俺をじろっと見ながら悔しげに呟いた。なにそれ。かわいい。
「…お前らそういう事はよそでやれ」
先に休憩所で煙草をふかしていたアスマに言われ、その存在を思い出した俺たちが顔を見合わせて笑ったのは言うまでもない。
背中
サナギさん 20130228