「残ってたのか」
イルカ先生のホームルームが終わってもアカデミーから帰らずイノと話していたらいつの間にか外では雨が降っていた。
しっかり者のイノは天気予報を見ていたらしく、もってきていた傘を開いた。
傘を持ってこなかったわたしを見かねてイノは、一緒に入ればいいと誘ってくれたのだがイノとわたしの家は反対方向。この後用事のあるイノには付き合わせるわけにはいかなかったので先に帰ってもらった。
わたしは忍なので、別段雨の中帰ることに対しての抵抗はあまりない。当然悪天候の中の厳しい任務だってこの先沢山あるだろうしこの程度で足踏みしてはいられない。が、今日は駄目なのだ。
今着ている服はいつだったか幼馴染であるシカマルに似合っていると言われた服なのだ。わたしにしては、という程度でもわたしには大きなことなのだ。シカマルはわたしにとって
「あ、うん…」
吃驚した。シカマルのことを考えていたらシカマルが声をかけてきた。外を眺めていたわたしは思わず勢いよく振り向く。「…なんだよ?」
「や、吃驚したから」「そうか」
「…」
「…」
沈黙が痛いなぁ。幼馴染とは言ってもわたしはイノほどシカマルとは話さないし、一方的とはいえ好意をもっているのでなんとなく緊張するのだ。
「傘、ないのか」
「まぁ、」
「…入れば」
「え」
「帰るんだろ」
「うん」
持ってた傘を開いて歩き出したシカマル。慌てて小走りに近づけばなんともいえない表情をしたシカマルと目が合って、促されるまま、同じ傘に入った。
「珍しいな」
暫くお互い無言で歩いていたのだが、ふいにシカマルが空気を揺らした。
「なにが?」
「お前、あんま気にしないだろ雨とか」
「ああ…服がお気に入りだったから」
「そか」
暗にシカマルが昔、言ってくれたからだよと言えば、一瞬固まったシカマルがとぼけるように笑った。
:
「なににやにやしてんだよ」
「いや、ちょっと思い出してて」
「なにを」
「んー…昔シカマルが傘に入れてくれたときのこと」
そう、もうあれから3年も経ったのだ。あれからわたしたちはアカデミーを無事卒業し、今ではそこそこ任務もこなしている。そしてシカマルとも
「あー、あれな」
「?なに」
聞いてきたくせに、歯切れの悪いシカマル。思わずじっと見やればシカマルはバツの悪いといううように顔を逸らしてぼそりと呟いた。
。
。
息を潰して
「お前が近すぎて可笑しくなりそうだった…って、トゲコ笑うな」
「ふふ。嬉しくてつい」
「…あーはいはい」
「だってそうでしょ?わたしたち昨日あんなにあいしあったんだもの」
不在証明
クーさん 20130217