本当は憎みたくなかったのに憎いと感じさせるからイタチは嫌いだと言えば暁の誰もがきっと甘いとかガキだと言うだろう。正直今のを第三者として聞いたなら私も同じく甘いと言う。
「サソリ」
「ん」
毒の仕込みをしながら聞いているのかいないのか取り敢えず適当に相槌を打つサソリに小さくため息を吐き、私は発言を再開する。
「イタチってどう思う」
「…お前な、」
種類別に毒を入れてある透明な筒が沢山並んでいる戸棚から二、三個ほど手に取ったサソリが漸くこちらを見て呆れたように眉をひそめた。外見はこんな美青年でも中身は中年だ。私の言いたいことも瞬時に理解出来る回転の速い頭もある。だからこそその呆れは私にとって痛い。
私が何も言わないのを理解したサソリは重く、不快を表す溜め息を吐き私を睨んだ。
「俺は暇じゃねぇんだ。てめぇで答えの出てる事を一々聞くな」
やはりサソリは頭がいい。だからすきだ。自分の考えを正当化してほしいが為にサソリの意見を聞きたいなんて甘えを許さない。
「はいはい」
諦めたように言い、立ち上がれば無理やりよけた物ががらりと崩れて今まで座っていた場所が無くなった。
「中年のおっさ「あ゛?」「…美形なおじさまが出ていけオーラをだしてくるので私は出て行ってあげることにするね」
「殺すぞ」
どうやら長居をし過ぎたらしく本当にヒルコの尾が向かって着そうなので私は足早に部屋から出た。
サソリの部屋を出て私は少し長い廊下を歩いた。廊下といっても床も天井も岩山を削って作られたような所。もしかしたら手を加えることさえしていない天然の洞窟にドアをはめ込んだだけかもしれないけれど。少し歩くと直ぐに目的の部屋へ着いてしまった。自分の意思で歩いたのになんでこうも早く着いてしまうのだと内心焦りが生じる。
「イタチ」
名を呼ぶと直ぐに反応があった。
「入れ」
あれだけ普段から殺気を向けているにも関わらず張り詰めた気さえイタチには感じられない。私程度の殺気などどうにも感じないのだろうか。それとも本気になった私程度では話にならないというのか。
それもまた仕方ないと言えばそうなのかもしれない。なんせ向こうはうちはでも優秀な忍、それに比べてこちらはうちはに引き取って育てて貰っただけで血の繋がりなど無い一般の忍だ。格が違うと言われればそれまで。
「話がある」
ドアを押すと簡単に開いた。ドアの向かいに置かれた簡素なベッドに前かがみに腰を下ろし顔の前で手を組んでいるイタチと目が合う。
「何の話だ?」
「あの夜の話を」
イタチの目が赤く、写輪眼に変化した。
私の目には決して宿ることの無いうちはの目だった。

大嫌いだなんてほんとうは嘘だった
それが本当になったのはいつからだったか。寧ろ実際はそれを本当にしてしまいそうなイタチを恨み、そういう形でしか向き合えないほど幼く成長しない自分が嫌いになったのかもしれない。


20111111