見た目なんら普通の岩山に見えるアジトの上に立って遠くを見やると任務を終えたらしい鬼鮫とイタチのツーマンセルが帰路に着いているのが視界に入った。
私は鬼鮫の数歩前を歩いているイタチを憎悪を込めて睨み、岩壁を滑るようにしてアジトの入り口前に降り立った。
「帰りましたよ」
「うん」
暫くして帰ってきた鬼鮫がこちらを見てにやり笑いながら言ったので不可のない程度に返し、私はイタチを一瞥してさっさとアジトへ入った。
「相変わらずですねぇ。イタチさん何か恨まれるような事でもしたんですか?」
「…数えたらキリがないだろう」
「まぁ、そうですよねぇ」
興味があるのか無いのか。否本心は割とどうでもいいのだろう鬼鮫の疑問をさらりと投げアジトの中に入ればサソリさんの部屋に入って行くだろうトゲコと目があった。認識した瞬間毎回俺を憎んだ目で睨んでくるのは構わない。寧ろ血は繋がって無いにしろ養子という形でもうちはの人間に憎まれるならば本望ではある。しかしながら言いたいことがあるならば言えばいい。そんな口には出しにくい感情はやはり生まれくる。
「また着たのかよ」
「いいでしょ」
サソリの部屋基作業場に入ればいつも通り頭やら腕やら傀儡のパーツが無造作に(本人曰く効率が良い)転がっている。
適当に座れるだけの隙間を作ってサソリの近くに腰を下ろせばサソリはこちらを怪訝な目で見て着た。ヒルコを着ていないときの外見の良さを理解してほしいものだとほとほと思う。勿論美に執着しているからには理解はしているのだろうけど何気ないときは無意識になるのだろうからそこも意識していてほしい。S級犯罪者といえどまだ自分は女を棄てては居ないつもりなのだから。
「なに」
「いや?」
いやと言う割には喉奥を掠れさせるようにククっと笑うのだから意地が悪い。
「気になるんだけど」
「勝手に気にしてろ」
「酷い」
「犯罪者に今更酷いなんて気にするような言葉でもないだろ」
「それはまぁそうだ」
とは言っても自分は何ら非道な犯罪はしてきていない。自ら里を抜け暁のトップであるペインの居るという雨隠れへと入り暁入りの意思を示しただけのことだ。
自分でもここは少しばかり勇気の居ることではあったけれど里に居ては出来ないこともあるのだと覚悟を決めたのもこのときだった。
「お前そんなに俺がすきか」「は」
「なんだ違ぇのか?」
「まぁすきか嫌いかと言われればすき、だけど」
当たり障りの無い居場所が消去法でサソリになっただけというのが本音なのだけどすきかどうかと問われればやはり好きな方だ。次に好きなのが少し五月蝿いけどデイダラ。嫌いなのはダントツでイタチだ。
態々里を抜けて追いかけ、殺してやりたいくらいには。勿論そんなことをすればペインに何を言われるかわかったものではないので殺されないように見張りつつ自分も任務を行い、全てが終わった後で殺す。途中殺されそうになるならば容赦なく相手を殺しても自らの手で殺したい。
但しそれは例外を除く場合の話だけど。
嫌いな理由は誰にも話しては居ないし木の葉に居るときイタチを憎んでいると話したことも無い。勿論それは一人残されたイタチの弟、サスケにも。
わかったようなふりしてきみを憎んでた
実際会ってみたら変わるかもしれないとさえ思っていた。里を出ても何も知らないまま憎むよりは価値のある生き方だとも。

けれどなにも変わらなかった。変わってなどくれなかった。だから私は余計にイタチを憎むのだ。


20111111 臍 柊