「あー」
「なんだよ」

シカマルの部屋、会話の無さが悲しくなった私が思いのまま声を出すとシカマルは気だるそうに天井を見たまま紫煙を吐き出した。
指先でじりじりと燃えていく煙草の灰が静かにベストの上に落ちていく。そしてこちらを見ること無いまま紫煙を吐き出した。

そんなことをしている内に先ほどシカマルの吐き出した紫煙は私たちの周りの酸素やら二酸化炭素やらといったものが混じり合った空間に消えていった。


「死にたい、」

静かな部屋に私のぽつりと呟いた言葉がなんだか大きく聞こえたけど、シカマルはそれでもこちらを向いてくれない。
仮にも彼女だというのに、この扱い。冷たいわけではないけど素っ気無い。そんなんだからシカマルを試したくて馬鹿な発言をするのに彼はお見通しというようにそんな素直じゃない私を放置するのだ。

「なんで死にたいんだよ?」

こっち向け、と意志を込めて黙ってただじっとシカマルの方を見つめて漸く、シカマルははぁ、仕方ねぇなぁと一言呟いて煙草を置き、こちらを向いてくれた。
本当はちゃんと理由を言って、シカマルにもっと彼女らしい扱いをしてほしかったのに、シカマルが優しい目でこちらを見てくるもんだから、もういいやってなってしまった。
そんなシカマルに惚れ込んでしまっている私は「来いよ」と手招きをする彼の言葉に犬の様にゆっくりと立ち上がってシカマルの足の間に座って寄りかかる。
それでも黙ったままの私の髪を、ゴツくも細くも無い指で梳きながら彼はもう一度私に同じことを尋ねる。

「名前はなんでそんなに死にたいんだよ?」

まるで小さい子を宥めるように髪を梳きながら尋ねてくるシカマルの声に涙が滲む。沢山言いたかった筈の文句を今はなんだか言いたくなかった。それを言ってしまったら私の一方的すぎる愛が露わになってしまう気がして悔しかった。
けれど、さっきまで見向きもしてくれなかった彼は、残酷な事に答えに気づいている癖に私に言わせようとするのだ。見透かしてしまう彼が憎い。そしてそんな彼をすきな私が一番憎い。

「死んだら、」

 
「ん、」
「シカマルは泣いて、くれるかな゛ って…」

途中で途切れてしまいそうだった言葉を最後まで言い切ると、惨めな気持ちと一緒に涙がぽたりと零れた。それを見られたくなくて涙を拭う私はまた、彼の吸い出した紫煙の香りに気付いてもっと惨めな気持ちになるのだ。

「本当に死にたいなら俺は止めねぇ。けど、俺は名前に死んで欲しくねぇ」

死 に た  り

狡いよ。そう呟けば彼は紫煙を吐き出しながら口角を上げ、無言で私の頭を撫でた。


レイラ
20110212