アカデミーに入ればいつもと変化無い奴らの挨拶を交わす光景が目に入る。そんな中俺は適当に挨拶を返しながらチョウジの隣に腰を下ろす。片方の手を何気なくポケットに突っ込んでポケットに手を入れたときに自然に下を向いていた顔を上げるとクラス全体が見えてきて、俺の視界には俺より少し背の低い名前がクラスに入ってきた姿が見えた。

「名前」

今日は遅せーな。後方の席に腰を下ろした名前の方を振り向いて言えば、名前俺の言葉には返さず「おはよシカ」と言ってきた。窓が閉まった廊下、風が入っているわけではないのにさらりと名前の耳元で揺れる髪に、視線を向ける。

「私と同じ時間になるなんて、今日は早いんだね」
「ってよりはお前が遅かったんだろが」

クラスメイトの名前は実は俺の彼女だ。この前付き合ってみないというこいつの誘いに流れで乗り、付き合うようになったばかりの関係はいたってドライなもので付き合っていると言わなければ普通のクラスメイトとなんら変わらなく見えるもんだ。
それでも、流れでもこいつと付き合うようになったのは俺にとって悪くないことだった。
「でさ、今日で付き合って丁度一週間目になるんだけど気づいてた?」

どういう意味で言ってんのかいきなりにやにやしながら言ってくる名前に俺は席を立ち、あいつらに聞かれたらめんどくせぇから後で話せと言うと名前は俺の手を引いて廊下に引っ張り出した。
俺はというと俺の手を引くこいつの俺と違うやわらけぇ手を見ながらそういやぁ一週間経ったんだなと、わかっていたが何と無くとぼけたフリをした。心なしか顔が熱くなってきやがる。

「ふふ、じゃあ今日は記念ってことでさ、どっか行こうよ」
「…めんどくせぇが、特別に付き合ってやるよ」

「はいはい」

どうかどうか明日もきみの空が晴れますようにとただ祈ることしかできない無力な両腕はいつかきみを抱きしめたいと傲慢に在り続けるのです

ほんとシカって素直じゃないよね。そういうとこもすきなんだけど。珍しくそんなことを言ってきたこいつに驚いた俺が勢いよく名前の顔を見てしまったのはまた別の話。


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不在証明 20110306