情けない話、アスマが死んでから親父に諭されるまでは無意識の内に泣かねぇって思ってた。葬儀も、行けなかった。そこに出てる奴らに顔向けできる気がしなかった。
自分のせいでとしか考えられねぇ。俺がもっと先の先まで読んでいれば、力があれば。後悔ばかり先に立つ。

アスマの敵を討つまでずっと、玉の事を考えてた。最後に俺に玉の事を話してたときのアスマは、死にそうだってのに、笑ってて全部、全部悔しくなった。そんな笑うなよ、とかなんでそんな血ぃ流してんだよとか、俺らを残していくなよ、とか。

「おかえり」
「…ああ、名前か」

「敵討ち出来たんでしょ」

夜のうちに、シカマルが里を出て暁の行方を追っていったことを聞いたときは苦しかった。けど、葬儀に顔を出さなかったときからきっとこうなるって気はしてたし、それを私は止められない。されたから仕返すを繰り返してたらキリが無いけど、私の知っている木の葉の忍はきっと皆、追うのだと思う。だから自分に与えられた任務をこなしてからずっと門のところで待っていた。

カカシ先生の言葉添えで暁を追うことを許されてからは腹の底を渦巻くような苛立ちが込み上げる中頭だけは妙に冷静なところがあった。それはアスマが俺に熱くなるなと言ってくれてるようだと、俺らしくもなく考えたが、実際敵を討ち終わると少しのすっきりと大きな安堵、そして妙な虚しさが込み上げてきた。

勝てるなら最初から勝てればよかった。んなの、今更考えても遅いし、これはアスマが命と引き換えにくれた情報だ。それがなければ今回も危なかったかもしんねぇ。だからこれはアスマが与えてくれた勝利だ。わかってんのに。

「名前、」
シカマルが下を向きながら歩いてくる。表情は翳っていて、よく見えない。でも、声は少し震えていた。

「少し、肩貸せ」
トン。シカマルより少し低い私の肩にシカマルの頭が乗る。シカマルからは煙草の匂いがした。アスマ上忍からよく香っていた煙草の匂いが。

泣くこともできなかった僕はいま、泣くことしかできなかった

涙が止まらねぇ。


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