私人魚なの。
アカデミーのときに知り合ったひとつ年下の友達名前は、演習場でパンを齧っていた俺の横にすとんと腰を落として呟いた。名前が大変そうに隣へと腰を下ろしのを見てそう言えば任務を暫く休んでいたということをナルトから聞いたなぁと思い出す。理由は骨折だ。
でも名前が人魚ってのは妙な話だ。正直胡散臭い以外の何者でもない。そんな風に考えながら俺の名前とは反対に伏せている赤丸の背中を撫でていると名前の尖った視線に気付いた。パックのオレンジジュースを握る手に力を入れてずずっと飲み干した。

何だよ?
その瞳に見据えられて疚しい事をしていないのに息をごくりと飲んでしまう。機嫌を伺うように聞けば名前はその目を普段の人懐こいそれに変えてはぁと溜息を吐いた。

「別に」
「足、あとどの位かかんの?」

「もう治ってる」

「え、」

治ったと言う名前の足は見た目はなんら俺の足と変わったところはない。でも隣に座る時、歩く時、名前は未だに右足を地面に擦る様にして歩いてた。んじゃ治ってないんじゃないのか。

「もうね、これ以上治ってくれないんだってさ」

自分の足を見下ろしてぺしぺしと軽く叩いている横顔に掛けて上げられる言葉なんて無かった。大丈夫ともきっと治るだろとも言えない。きっと負けず嫌いで意地っ張りの名前が治ったと言うのならそれはきっと足掻いた結果だ。

「だから、人魚。片足だけ。上手く歩けないから、水の中の方が私の足は言うことを聞いてくれるから」

俺たちの周りの酸素濃度だけが薄まったように呼吸がしにくい。
「そ、か」

















こいつが強がりで
良かった。こいつ
が泣かなくて良か
った。抱き締めて
しまわずに済んだ。



にやり
20110209