二つ年上の幼馴染はとても優秀だった。どこがと聞かれたら私は迷わず「かっこよくて頭もよくてやさしいのに鼻にかけないなんて素敵以外のなにものでもない」と言うだろう。
そんなことでしっかりその優秀な幼馴染に恋心を抱いてしまったのが運の尽きだった。自分の中では王子様のような存在の幼馴染に惹かれてしまったものだからクラスの男には全く興味もないし話をするのも詰まらなく感じてしまう。幼稚園のときに惹かれて、結局私は18歳になった今でもその幼馴染以外が男性に見えない。
「イタチさん」
「どこかわからないとこがあるのか」
来週に迫るテストに向けてという口実で有名大学に通っているイタチさんに勉強を教えて貰っていた。こういうとき幼馴染だとお母さんからも「お願いね」なんて押して貰えて助かる。
「こことここ。証明問題全然わからなくて」
「難しく考えなくていい。こういうのはな」
軽く口角を上げて笑みながらそう言うイタチさんに心臓がすぐさま反応する。
高校の頃と比べて彼のやさしさはよくわかるようになった。それは高校生と大学生という括りで離れてしまったために二歳差が露骨に感じられたのか、よくはわからないけどそのやさしさは大人が子供にするそれのようでときどき痛い。
そのくせ、笑い方は変わらないものだから私は直ぐにときめいて、彼にだけ反応する心臓はより跳ね上がるようになった。
私がわからないと言った証明問題の解き方を教えてくれているイタチさん。けれどそれを聞いていても思考は恋愛路線に入ってしまったらしく全く頭に入らない。

「 名前?」

「…イタチさん、折角教えて貰ってるのにごめんなさい。でもわたし…」
「どうかしたのか」
「私、イタチさんがすき。」
言いたいと思ったのは急だった。どうして今なのか私にもわからない。でも、凄くすきなのだと思ったら言わずにいられなくなってしまった。
何も発さないイタチさんの視線が痛い。それはそうだ。折角勉強を教えてくれているのに恋愛に現を抜かして全然集中していないのだから。もうこれは振られるのだろう。
けど、そんなの何年待ったって二歳差は縮まらないのだし私の前にイタチさん以上の王子様が現れてくれる保障はない。ならいっそぶちまけてしまいたい。
「私はまだ高校生で、イタチより二歳も下でイタチのやさしさに甘えてばかりだけど、でもわたしは「そう、二歳も下だ」

「名前はまだ高校生だろう。だが俺は大学生でもう二十歳になる」
さっきまでばたばたとしていた思考が一気に冷めたみたいだ。だいすきなイタチさんの声が静かに頭に入ってくる。
「だから俺には責任がある。名前が高校生だろうと俺はそれなりの年齢なのだからキスだけで充分なんて満足できるわけでもないしな」「キス…え?」
「だから高校を卒業してから俺のになってもらう予定だったんだが…な」
「イタチさん?」

抱き寄せられた肢体はあなたにからみ付く間際に押し倒された

「名前がそういうつもりなら俺も男として応えてあげなければいけないな。取り敢えず、証明問題は明日ちゃんと習得させるとして今日はもっと別の勉強でもするか」
「あの、イタチさ」
「もう待ったは聞けない」
彼に落ちる。


るるる 20110924