斜め前を歩く名前の背中がなんだか寂しそうに見えんのは今夜が肌寒いからなのか。
先週まで暑い暑いと嘆いていたのにここ数日は急に秋の訪れを感じるような涼しさになって寒い寒いなんて我侭を笑いながら零すようになった。けど、それがこいつには心が寂しくなる要因になる、らしい。
つい最近、付き合うようになった名前は数ヶ月前まではただの幼馴染で(否、俺にとってはずっと"ただの幼馴染"なんかじゃなかったけど)。でも名前は俺にすきっつってくれて付き合えて。
それからだ。こいつは本当は凄く寂しいって感情に弱いんだって知った。
「キバ」
高校が終わって直ぐにふたりで遊んだ。その帰り道だった。俺はいつも通り名前を家まで送っていた。ずんずんと少し前を歩くこいつが家の近くに来たところで急に立ち止まった。
「どしたんだよ?」
「…」
声をかけた。振り向いた名前は泣いていた。俺が情けなくも動揺するとそれが顔に出てたらしくて(更に情けねぇ)名前は無言で首を横にふった。髪がさらさらと流れるのが不謹慎にもきれいだなんて思う。泣いてんのを見っと泣くなよって思うくせに同時に泣いてんのもきれいだなんて思う。
それは空の小さな星が映っているようにみえるからなのか。

屑を誤飲

目元を濡らす涙を掬うつもりで引き寄せてキスをした。名前は黙って俺の背中に腕を回した。背中に必死そうな熱を感じた。


ランプ 20110924