広いとは言えない部屋の隅に置かれたソファに座っている幼馴染の名前は眉間に皺を寄せて俺を見据えていた。

「なんだよ」
こいつの言いたいことがわからないわけじゃないが敢えて言わせることに意味があると考えた俺は口を開いた。
すると伊達に何年も幼馴染をしてるわけじゃないとでも言いた気に名前は眉間に皺を寄せたまま肺の中の空気を押し出すようにため息を吐いて呟いた。
「わかってる癖に」
「なんだよ」
「…だから、わたしと付き合おうよ」
「やだね」
だから、言いたいことがわからない俺じゃない。俺が聞きたいのはそういうことじゃなくて確信に触れる一言。それを渋るのは今更だって羞恥心のせいだともわかる。けど、そこはやっぱ聞きたいもんだろ。
こっちだって変化のない幼馴染の関係には嫌気が差してたんだ。
羞恥を紛らわすためかいつもより微かに口調の悪い名前を見ているのも悪くかない、がそろそろこの状況を打破すべく俺は立ち上がった。
瞬間名前の肩が揺れた。付き合おうと言われてるからにはそうじゃないと困るが好きな奴に意識をされてるってのはそれだけで嬉しくなるもんだと再認識する。
ぎしり。名前の隣に空いていたスペースに腰を下ろすと二人分の重みでソファのスプリングが小さく音を上げた。と同時に隣のこいつの身体が少しだけ緊張してるのがわかる。
小さくため息を吐くと名前は恨めしそうに俺を見た。
「俺は、名前がすきだ」
俺を見据える名前の目を見てそう言うと戸惑いを表すように名前は控えめにちらりと一度視線を落として加虐心を芽生えさせるような表情をした。
「…うん、」
「で、お前は?」

「わたし、」
顔が熱い。シカマルをすきだって、心の中では勢いでだって言えるのに口に出すのがこんなにも勇気のいることだって知らなかった。幼馴染としてのすきなら今まで言ってきたことはあるのに。幼馴染としてだと思ってもらえるように誤魔化して言ったこともあるのに。一度意識をしてしまうと自分の全てが見透かされているように思えて仕方ない。わたしが、どのくらいシカマルをすきなのかって。
「わたし、はシカマルがす」


あいをあいで寸止め

わたしはシカマルがすき。そう、言い終わる前にシカマルとの距離が無くなった。思わず閉じた目を、開けるとシカマルは片方の眉を下げ口角を上げるように笑っていて瞬間息が止まるかと思うくらい、すきだと思った。

「悪いな、最後まで言わせてやれなくて」
お前がいい顔してたから止まんなかった。



sep15.22さまに提出しました/20110809