こつこつ。夜道に自分の足音が響く。
こつこつ。嫌な感覚が背中に走ってぴたり。歩を休めてみると後ろで聞こえた規則的な足音も止んだ。どくんどくんと心臓が流行り手の皺には汗が滲む。そろりと出来るだけ顔を動かさずに後ろを見れば、後ろには誰も居ない。
ほっと安心して前を向く。銀髪の男が立っていた。
「っ、」
顔が引きつる。私は息を呑んで駆け出した。家はもうすぐ。けれど男は追いかけてくる。音も無い。怖い。追いつかれてしまう、追いつかれて
「名前」
男が私の腕を掴んだ。聞いたことがあるような声。けど、記憶は新しくない。私の手首を掴む腕から逃れようと力を入れるのに微動だにしない。そこにはめ込まれてしまったように1ミリも動かない。
「久しぶり。覚えてる?」
銀髪しか見えなかった男の顔が月明かりで見えた。
「やっぱりかわいいね」「は、なしてはたけっ…なんで、」「すきだったんだよ」「放してっ」「だからもう、逃がさない」

捕まえた。


20110401