空をしばらく見上げてコンクリートに横たえている足下に視線を投げれば視界が急に狭まったような気がして肺に溜まった酸素を押し出すように溜め息を吐いた。
「重苦しい溜め息だねぇ」
後頭部に投げかけられた言葉に空を仰ぐように後ろを向けば中学1、2、3年とクラスメイトだったカカシがいた。
「しあわせが逃げるって言うんでしょ」「どうだろうね」「どうせ迷信よ」「…どうだろうね」
カカシのどっちともつかない言葉にまた溜め息を吐いて視線を落とす。正直言うならこんな一癖も二癖もある奴をすきになった馬鹿な自分への溜め息だ。
カカシが隣に腰をかけた。
「名前」
私の名前を呼ぶ。私は諦めたようにカカシを見た。唇が、塞がれた。
「…え、」「なにぽかんとしてんのよ」「え、だ…って」「しあわせ、逃げなかったでしょ?」

「…、」
しあわせが肺に溜まった。


20110401