私にとっては憂鬱なだけだった長期任務も終わり、暫くは貰った休暇を堪能できる。そんな私は恋人であるカカシの家に押しかけていた。とはいってもどうせベッドの上で本でも読んでいるんだろうと高をくくっていたので私は敵の忍の血で汚れてしまったクナイを磨こうともってきていた。
カカシも2、3日は体を動かしてはいけない状態らしいので先ずすれ違わないように木の葉病院に行って確認してきたから恐らく家にいるだろう。

その私の考えは、ドアをノックするなり顔を出したカカシが事実にしてくれた。私を中へ上げたカカシの猫背越しに見えた、顔辺りまで上げられている本のページがちらりと見え、確信した。カカシは私が来る今の今まで本を読んでいたな、と。

「ねー、カカシ」
「んー?」

「あのさ、どうせ次の休暇の予定決まってないでしょ?」

「どうせって何よ」
「じゃあ決まってる?」

「決まってけどね」

本を読んでいるカカシのちょっと後ろ、ベッドに寄りかかるように床にぺたんと座って持ってきたクナイを磨きながらそんなことを言うとカカシは本に視線を落としたまま「女の子なんだからそういうのは俺に隠れてしなさいよ」と言った。
確かに女らしくはないけれど実際カカシは言うほど気にしてないだろうから一瞬磨くのをやめた手を動かした。

「じゃあ決定。いつもの面子でどこか行かない?
「いつもの面子って誰?」
「ガイとかアスマとか紅とか」

「お前ね、勝手に話進めないでよ。大体、上忍が揃いも揃って休暇をもらえるわけないでしょ」
「そうかもしれないけど、里から少し外れた温泉辺りならすぐ戻れるじゃない」

ぱらりとページを捲った所でそんな風に言う名前の声が聞こえて、俺はつい感情が波打った。読みかけのページを覚えてくるりと名前の方に向き直る。

「名前」
「んー、なーに、 んっ」

本が一段落して漸く話を聞いてくれる気になったのかと思った私が顔を上げると、カカシは後頭部に手を回して逃げられないようにしてから口布越しにキスをしてきた。わざわざリップ音もつけて。

休暇に会ってもそれぞれ違うことしかしないからたまにはゆっくりと出来たらなんて思っていただけだったのが思いがけず甘さが降って来て少し心臓が逸った。
おれのはなしをしようか

にこりと笑顔を貼り付けたカカシが口布を指で下げ、口角を上げながら言った。もう一回する?と。


花眠
20110215