カチリと音がしてキッチンからリビングへと視線を向ければソファに座っているカカシの本を読んでいる横顔と、パラリとページを捲る手元が見えた。視線を手元に落として、コーヒーの揺らめいているカップにミルクを入れてくるくるとスプーンで二色で円を描きながらコーヒーのいい香りを堪能する。

「カカシも飲む?」「んー…もらおうかな」「じゃあ淹れる」「うん」

ミルクの入った自分用のコーヒーと、カカシ用のブラックコーヒーを持ってカカシの隣、ソファに腰を下ろせばカカシはソファの背凭れに寄りかかっていた体を起こして前かがみになった。読みふけっていた本をぱたりと閉じて、テーブルに置く。

「ありがとうね」「いえいえ」

細めた目の目尻を下げ、マスクを下げて微笑みながらカカシはカップにその手を伸ばす。ただそれだけの仕草がカッコ良く映るのはその指に無駄な肉は無く、すらりとしているからだろうか。

「名前のコーヒーっておいしいよね」「そう?」

こくりと、喉を鳴らして2、3口飲んだカカシはカップを膝の上で持ったまま、徐にそんなことを言い出した。カカシは普段から話を切り出すときはこんな風に突然なので、その予想の出来なさが面白いと思う。というよりも頭の構造が違いすぎて理解が遅れるだけなのだけど。

「うん。コーヒー淹れるのが上手な人と料理が上手な人はいいよね」「…ふーん?」「いい朝だよね。仕事も頑張らなきゃなぁって思えるし」「つまり?」

「つまりね、名前は俺と結婚しちゃえばいいんじゃない?」

天才的エリート脳


氷上
20110213