がやがやとざわつく教室。放課後では当たり前のその光景にまで苛々したり落ち込んだりするのはきっと心の狭い私くらいだろう。けれど私だって煩いだけならば何も落ち込んだり苛々するなんて事はない。
理由は他でもない。カカシが、クラスメイトと楽しそうに笑顔で話しているから(話しかけられてると言った方が正しい)。
カカシは去年の終わりくらいに私が告白をして付き合い始めた相手。だから今年同じクラスになれたときは嬉しくて仕方なかった。それも本当に始めだけで、カカシは私にはあまり向けてくれない笑顔をクラスメイトに向け、私には掛けないような優しい言葉をクラスメイトや後輩に掛けるのだ。

早い話が嫉妬している、ということなのだけど同じクラスになれたのをカカシが喜んでくれたわけではない。告白も自分からだったのだ。半年付き合いは続いてはいるといっても自分だけがすきなのではないかと私は休み時間や放課後の度焦燥に押しつぶされそうになるのだ。
そんな私の視線をカカシが気づいてくれないこと、そしてクラスメイトや後輩と話しているだけのことに嫉妬をしてしまう自分に寂しくなるのだ。なんで私はこんなに心が狭いんだろう、と。不安なら自分が直接カカシに聞けばいいのだとわかっているくせに。
けれど不安なら別れようと言われたときの事を思うと「私のこと本当にすき?」なんてことは聞けないのだ。あまりに醜い自分の感情がこれ以上あふれ出してしまわないように、私はクラスメイトと話しているカカシから視線を逸らすように机に突っ伏した。

「なぁなぁ」
つん、っと髪を引っ張られたような感覚がして顔を上げると、目の前には後輩のナルトがいた。確か、カカシと仲がよかったはずだ。中学からの付き合いだと聞いている。文化祭実行委員で同じになったのがきっかけだとか。

「あ、なに?」
私がそんな風に頭を回転させているとナルトは始終にこにこしていて、何の用なのだろうと、話を戻した。

「名字のねーちゃんって、カカシ先輩の彼女だってば?」「え、あ、うん」「カカシ先輩ってど?優しい?それとも冷たいのか?」「えー、どっちかと言わなくても多分、そっけな「ちょっとさ」
「カカシ」
私の髪を握ってまだひっばっているナルトを人懐こい子だなぁ、殆ど初めて話したのになんて思っているとナルトの後ろからカカシが声を掛けてきて、ナルトの襟首を掴んだ。
「な、カカシ先輩く、苦しいってば!」
いきなり後ろからなんて狡っこいぞ!そう言うナルトがなんだかすごく可愛く見えたのはきっと隣にカカシが居るからなのかも知れない。
「お前ね、俺に断り無く名前と仲良くしてんじゃないよ」
「わかったから離してってば!」「…」
「お前も、簡単に俺以外に触らせてんじゃないの」

沈むお砂糖と私

私の髪を触っていたナルトの手を叩いて、私にそう言ってぷいっとまたクラスメイトのところに戻っていったカカシを見た私は顔が熱くなった。隣でカカシに叩かれた手を押さえながらナルトがぼそりとカカシ先輩は優しいみたいだな、と笑ったから、私もつられて笑顔になった。


20110211