名前の遠ざかる後姿を見て、腹の底から後悔が溢れ出る。大事な宝物がなくなってしまったような。半身がなくなってしまったような、きっとそんな悲しみ、絶望だ。

「ばいばい我愛羅」

振り向く名前の目は、なんて冷たい。そうさせたのは俺なのに。体の芯が毒にやられ痺れているようだ。空気の冷たさが刺すようだなんて今更思う。
大切だと思っている名前に何も言ってこなかったのは俺なのに、自分が名前を大切にしてないことはわかってはいたのに名前はそれでも側に居てくれるだろうと甘えていた。言わなかったのではなく、どう言えばいいのか、わからなかった。
名前も強くはないのに。


「行く、のか」

「…もう、無理なの」

震える唇が声にしたのは随分と懐かしい言葉だった。何度となく名前が俺に言ってきた言葉だった。
ごめん。それに対して名前の呟いた言葉は酷く覚えのある言葉だった。俺の言葉は初めて形になった。そして砂のように崩れた。


無音の呼び声


20110209