秘める
性の多様性が認められたにも関わらず、人々はむしろ、異性愛に走るようになっていた。
幼い頃からゲイであることをひた隠しにし、長ずれば偽りの笑顔がSNSを飾る。
告発システムを恐れて。
***
告発システムの愛用者、晴香は普通の男と結婚した。
そして興平は、晴香の夫に、恋をした。
興平の脳裏に過るのは、告発システムのルール。
『一、ゲイは、ゲイでない男に恋をしてはならない』
「まじかー……」
自分の気持ちに嘘をつかないことを信条としてきた興平だが、今回ばかりは無理だ。
告発システムのルールは、そもそも同性愛者の権利意識の向上と戒めを兼ねている。