Seeking Love | ナノ

03.Mind your business.

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 呆れたような口調で我に返った。
「いや、なんでそんなこと」
「だって最近、ぼーっとしてる。俺の勘。妹が恋煩いだったとき、そうだったから」
 それはまた随分と当てにならない勘だ、と言うのは容易い。
 だが茶化すことができないほど、耕造は寂しそうだった。
「玲菜のこと、考えるのか」
「はぐらかすのか? いやまあ、考えない日はないよ。妹だからな」
 目を細めどこか遠くを見遣る耕造はその視線をそのまま四葉へと向ける。
「お前は。家族のこと、考えないの」
「考えるも何も。家族はお前だけだ」
 心底真面目に返すと嫌そうな表情をされた。
「ちーがーうって。血のつながった家族のこと言ってんの。いないの?」
「いない」
 嘘は言ってないと思う。
 血縁があるからといって、家族とは限らない。
「ふうん。あっそ」
 思ったよりも軽い返事にほっとしていると、耕造は扉へ手を掛けた。
「お前の護衛が怖いから、俺もう行くわ」
「ああ、行ってらっしゃい」
 耕造を見送り、再びベッドで目を閉じる。
 ふと傍に強く気配を感じた。
 くすりと漏らされる笑みに、それが次兄と知る。
「お前、ほんっと腹立つな」
「それは失礼致しました、四葉さま」
「にやにやするな、気持ち悪い」
「はい、申し訳ございません」
 見てないのにわかるのか、なんて野暮なことを訊かないことがまた腹立たしい。
 にこにことまったく反省する気のない声に、うっすらと瞼を持ち上げる。
 ほらやっぱり。
「それにしてもひどいですね。大空や深水まで兄弟ではないと?」
「よくもそんなことをいけしゃあしゃあと言えるな」
「かわいい弟が悩んでいたら、誰だって構いたくなる」
「陸離は可愛くなかったのか」
 冷たく吐き捨ててもなお、風月の表情は柔らかい。
「かわいかったですよ。愛しかった。俺の初めての弟です」
「俺は陸離の代わりではない!」
 抑えられない感情のままに叫ぶと頭を撫でられた。
 その手を振り払い睨みつける。
 昔から、そうだ。
 俺を通して、陸離を見て。


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